働く広場2020年6月号
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働く広場 2020.6からも『これは便利だ、自分たちも使いたい』といわれ、配りました。自分で数を数える作業だけでも、従業員みんなの小さなストレスだったのだと知りました」と俊介さん。 ほかにも職場には「数のストレス」があった。日報だ。数種類の作業時間を合計して一日の労働時間を記入することになっていたが、「3時間35分」、「2時間55分」、「1時間20分」といった時間の合計は、少しおっくうな作業だ。終業時間になるとあちこちで電卓をたたく姿を見ていた俊介さんは、システムエンジニアの腕を活かして「日報アプリ」を開発した。アプリを各自のスマートフォンに取り込んでもらい、作業書にあるQRコードを読み取ることで、具体的な作業内容と時間が自動的に入力される。一日分の合計が所定労働時間の480分(8時間)に達すると、画面右上の顔マークが笑顔に変わるというものだ。このアプリは、工場全体の生産管理を大きく向上させることにもつながった。「各部品の日々の実績データが細かく蓄積されることで、これまでより正確に進捗状況を把握・予測できます。受注内容にかかる経費なども計算しやすくなるため、営業活動での見積り提案もしやすくなりました」一人ひとりの実績表ができたことで「成果の見える化」も実現した。さまざまな作業ごとに1時間あたりの加工実績が毎月集計され、あらかじめ決めておいた目標値に対する達成度が算出される。例えば、ある月のA部品の検査個数が計9時間で2万7000個。目標3万個に対し達成率90%といった具合だ。ただし、従業員のみなさんの実績表をちらっと見せてもらったが、達成率100%の数字はほとんどなかった。「実は、過去実績の平均値が達成率67%になるよう目標値を決めているので、70%以上が上出来で、100%は出来過ぎです」実績表は、本人だけに見せて、ほかには公表しない。給与にも影響はしない。自分の過去の実績と見比べてもらい、どれだけ成長できたか、逆に落ち込んだときには何が課題だったのかをフィードバックし、向上していくための指標としている。「実際には、本人のがんばりをほめて励ますための材料ですね。数字を見るだけで、やっぱり自分の仕事ぶりを気にするようになり、モチベーションにもつながります」と俊介さんは話す。 2016年に事務員として入社した佐さ々さ木き彩あや花かさん(22歳)は、新卒採用枠に応募してきた。それまで事務を長年担当してくれていた従業員が「もう70歳を超えたので、若い人に引き継ぎたい」と申し出たことから、ハローワークに一般事日報アプリの開発小さな工夫で苦手を補う不良品の数を記録する数取器数字の見本が貼られたファイルボード日報アプリは成果の見える化にも貢献している事務を担当する佐々木彩花さんは入社5年目7

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