働く広場2020年7月号
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働く広場 2020.7可視化。専門知識のない管理者でも状態を把握できる。精神障害のある社員には体調の波が大きい人もいるが、なぜその不安が生じるのか、その引き金や原因になるものを把握することを心がけている。本人が登録している就労支援機関と連携し、主治医の意見も本人経由で聞いて対応している。「自分で原因を認識していても、受け止め方を変えられず悩んでいる人もいます。現場のリーダー管理職たちは、根気よく、その人をしっかり見て向き合うようにしています。本人が、認められているという実感を持ってもらうことが大事だと思っています」現場リーダーだけで解決がむずかしい場合には、社員の健康支援をする「人材支援グループ」が対応する。8人が在籍し、1人あたり40~50人を担当。生活面や上司にいえないことなどの相談も受けている。その結果、1年以上の職場定着率は9割以上になっているという。 2015年に入社し、いまは人材支援グループに在籍する中なか津つ井い亨とおるさんは、双極性障害Ⅱ型の障害者手帳をもつ。インタビューでは、自身の経験をふまえ職場のあり方について語ってもらった。中津井さんは大学卒業後、経営コンサルタント会社に新卒採用されたが、上司との関係に悩み、うつ病を発症して退職、何度か入院もしたという。その後、療養を経て再就職を目ざしdodaチャレンジに登録し、担当者の対応に好感をもったことから、パーソルチャレンジに自ら応募したそうだ。入社後は、求人広告の原稿制作から担当。はじめは単純作業だったが、社内研修でエクセル関数を学んでマクロを組んだり、制作の進行管理を任されたりするようになった。かなり順調な仕事ぶりだが、その間にも「体調の波は激しく、プレッシャーが大きいと落ち込みも強かった」と明かす。「ただ、そういうときも仕事の不安や悩みを、親身になって聞いてくれた上司の存在は、とてもありがたかったです。一番救われたのは、まず『それはたいへんだね』と寄り添ってくれて、自分の気持ちを包み込んでもらったと感じたときでした」また体調不良で欠勤し、再び出社したときには「治ってよかったね」だけで終わらず、「理由や原因について掘り下げて聞かれたことが、むしろよかった」という。いろいろ状況を聞かれるうちに、自分では気づかなかった不安や悩みに気づけたからだ。中津井さんは2年目にサブリーダー、3年目にはリーダーに昇格。現場のメンバーたちをサポートしたり面談を受けたりするような存在になったいまは、かつて上司が自分にとってくれた姿勢を見習っているという。中津井さんは、中途入社メンバーのOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)や1~3年後の研修の企画などを担当するほか外部講師も務めている。いまも気持ちが不安定なときは、自分を客観視できるよう、気持ちや考えを紙に書き出すようにしている。これは闘病中に自分で考え出した方法で、症状が重いときは3〜4枚ぐらい書くそうだ。精神障害のある人を採用するときのアドバイスももらった。「例えば気分の浮き沈みが激しいといった『障害の中身』よりも、本人がしっかり『自己受容できているか』が重要だと思います。自分でメンタルフォローする方法を身につけているか、相談先はあるか、といった確認も大切ですね」ちなみにパーソルチャレンジの職場内では、社員が自分の障害種別についてオープンにしていない。井上さんが説明してくれた。「社員一人ひとりが、自分はこういう特性があり、こういう配慮が必要だと自己理解しているので、管理者が、それぞれ個性として受け止めていれば十分です。そして自己理解ができている社員は自然と、ほかの人を思いやる気持ちも出てく気持ちを包み込んでくれた「備品の配置・置き場所の見える化」も配慮の一環だ(写真提供:パーソルチャレンジ株式会社)作業手順を解説したマニュアルは、いつでも確認できるようにオフィスに設置されている(写真提供:パーソルチャレンジ株式会社)8

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