働く広場2020年7月号
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働く広場 2020.7Q 2 はじめて雇用して就労が始まった現場では、﹁本人に手空きの時間をつくらない﹂ことに留意しましょう。現場の指導者からよく聞く悩みが﹁予想をはるかに上回る速さで作業を終わらせてしまい、手て持もち無ぶ沙さ汰たになってしまった﹂というものです。あらかじめ、時間的に融通のきく作業の種類や量を多めに確保しておくことをおすすめします。 さらに仕事に慣れてくると、職場環境の改善や就労支援機器の導入、適切な教育訓練などにより、特性上は不向きだといわれていた職種に従事するようになる障害者も数多くいます。実際に、視覚障害者が﹁拡大読書器﹂や﹁画面読み上げソフト﹂を活用して事務をこなしたり、知的障害者がパソコン作業を行ったりしている職場も増えています。専門職の多い職場なので、障害者が従事できる仕事がありません。A 新たな職務をつくり出します。まずは現場の業務を細かく洗い出してみましょう。 どの職場にも、コピー・シュレッダー作業や、メール便などの仕分け・配送、資料のセット・封入などの作業があると思います。部署間で一緒にできる作業を一括することで、社内業務を合理化でき、社員が本来業務に専念できるメリットもあります。 まずは各部署に対し、業務把握をするためのアンケート調査の実施をおすすめします。社員に一日の業務スケジュールを細かく書き出してもらうことも有効です。仕事の棚卸しを行い、障害者が従事する職務を選定しましょう︵図表1・2︶。また、実際に従事するときのために、業務マニュアルの有無も確認しておきましょう。 ケース1 相談者:従業員500人弱の建設会社相談内容:障害者に任せられる仕事がない。改善策:現場を確認したところ、営業2部署で発注作業をする補助事務員が来客時のお茶出しも担当し、そのたびに作業が中断していた。そこで障害者︵精神障害︶を1人採用し、お茶出し・応接室管理や事務作業の後方支援を担当。結果として補助事務員の残業時間が大幅に減った。 ケース2 相談者:従業員300人規模の製造業の管理課社員相談内容:直接雇用したいが、どのような仕事を準備したらよいか。改善策:管理課で行う一日の作業を細分化し、作業時期、作業頻度、数量、所要時間、必要なパソコンスキルやソフト、難易度などを一覧として作成。また、年間の業務スケジュールに基づ障害のある人に、どんな職務を任せればいいのかわかりません。A 障害の種類や程度だけではなく、﹁一人ひとりの状況﹂に応じて決めることが重要です。 一般的には、各障害の特性によって不向きな職種もありますが、障害者一人ひとりの具体的な障害状況やスキルの習得状況、本人の希望・意欲などによっても異なってきますので、担当者は﹁障害者に向いている仕事、向いていない仕事というものはない﹂という考え方のもと、総合的に職務を決めていく姿勢が大事です。 雇用の第一歩として職場の配慮を検討するときには、まず障害ごとに一般的にいわれる特性を念頭に置くとよいでしょう。第3回第3回はじめての障害者雇用はじめての障害者雇用 これまで、障害者雇用の考え方や支援制度、雇用率の算定対象・方法などについて紹介してきました。  いよいよ今回は、実際に雇用を進めていくうえで必要な、職務の選定や創出の方法、職場のバリアフリー化についての留意点やポイントを、実際に寄せられた相談ケースとともにまとめました。 (協力)中央障害者雇用情報センター     障害者雇用支援ネットワークコーディネーター 礒邉豊司さん、内田博之さんクローズクローズアップアップAQ 1A●肢体不自由  移動が少なく座って行えること●視覚障害  視覚的判断や頻繁な移動の必要が  ないこと●内部障害  長時間の残業や交代勤務がないこと●知的障害  簡単な判断で行えること●精神障害  対人対応が少なく短時間勤務が  設定しやすいこと 10

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