働く広場2020年7月号
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り組んでいる」と明記。障害者、雇用者双方に対する支援の必要性が高まるなかで同協議会の活動に期待が寄せられる。八木さんが「『協議会』設立呼びかけ」と題する2003年11月の文書を用意してくれた。呼びかけ4団体の代表である世田谷区長、東京商工会議所世田谷支部会長、東京青年会議所世田谷区委員会委員長、東京都立青せい鳥ちょう養護学校(現在は特別支援学校)長の連名である。呼びかけ人代表の「決意表明」では、「企業と地域と行政のパートナーシップのもとに障害者雇用を推進すること」を力強く表明している。障害者総合支援法に基づく地域自立支援協議会では、相談支援などと並んで就労支援部会を設置する自治体が多いが、世田谷区では、就労支援部会は設置していない。協議会の構成員としてかかわりながら、事務局をになうことで「公」の責任を果たす。それを基盤に事業主団体を中核に、支援機関や学校などとのネットワーク型で主体的な活動を進めている。今回、協議会の取組みについてうかがうために同席してくださったのが、おもに精神障害者を対象にした「世田谷区障害者就労支援センターしごとねっと」センター長の湯ゆ浅あさ順じゅん子こさん。2010年からしご就労支援にたずさわり8年目の八木さんは、同区における取組みのキーパーソン。世田谷区では、障害種別に応じた三つの障害者就労支援センターを設置し、それぞれの専門性を活かしながら互いに連携して支援を行っている。障害者就労支援センターが区内の就労支援施設などとネットワークを組み、その中核として就労準備から定着支援、企業開拓まで一貫した体制をつくり、就労支援に取り組んでいるところも特徴である。また、区内には二つの精神科病院があることから、さまざまな団体が精神障害者に対する先駆的な取組みを行い、就労支援において注力しているのも特徴的だ。世田谷区では、知的障害者、精神障害者を区が短期間雇用するチャレンジ雇用や、一般就労へのステップアップを目ざす外郭団体による「保護的就労」と呼ばれる事業を実施。さらには、テレワークなどによる在宅就労や障害特性に応じた短時間アルバイト、地域住民とともに活動するメール便の配達など、雇用の可能性が広がっているなかで、「身近な地域での多様な働き方の拡大」が課題だ。「せたがやノーマライゼーションプラン」と「世田谷区障害福祉計画」では、就労支援のおもな事業展開として、就労支援ネットワークの強化、職場定着・生活支援の充実、「ユニバーサル就労」の開発など、地域特性をふまえた具体的な計画が提示されている。読み進めていくと「協議会」のくだりがある。「産業、教育、行政などが連携して、企業への障害理解と雇用促進に取障害者雇用の質的向上が求められるなか、地域の企業、産業団体、学校、支援機関、行政機関などが、「真」の連携を図りながら協働していくことが、その鍵を握っている。東京都世田谷区では、2003(平成15)年から障害者雇用・就労の促進に賛同する多くの機関・団体が参加して「世田谷区障害者雇用促進協議会」(以下、「協議会」)を創設。多様なプログラムや企画を実施しながら、世田谷区の地域特性を活かした障害者雇用・就労を推進している(23ページ表)。また、同区では「せたがやノーマライゼーションプラン(世田谷区障害者計画)」のなかで、働きたくても働くことがむずかしい人のために、多様な働く場を創出する「ユニバーサル就労」の開発を計画しているが、そこでも企業と関係者との連携が大いに期待されている。今回は、時代の要請に応えながら地域に根ざした実践を展開している協議会の取組みを取材することにした。小田急線・京王井の頭線下北沢駅から至近の区の施設、北沢タウンホールで、世田谷区障害福祉部障害者地域生活課障害者就労支援担当係長の八や木ぎ早さ知ち子こさん、同主任の林はやし田だ千ち春はるさんが出迎えてくれた。まず、世田谷区の障害者雇用・就労の取組みについてうかがう。人口約92万人(2020年4月現在)の世田谷区は障害者施策全般においても先駆的だ。障害者の世田谷区の障害者雇用・就労支援協議会の意義と区の役割構成員である支援機関から見た意義働く広場 2020.7世田谷区障害者就労支援担当係長の八木早知子さん企業・支援機関・学校・行政が連携し、地域の協議会を設立区行政のバックアップを受けながらネットワーク構成団体が連携多様な就労を意図した活動を展望123POINT21

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