働く広場2020年7月号
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「雇用者」が障害者理解を深めることに役立てる。また、収集した情報は他の活動とも共有することで、それらの団体に障害者雇用の応援団になっていただく。このような段階をふみ、「普段着の障害者雇用」の実現に向かって進みたいと石田さんは想いを語ってくれた。協議会の活動について理解したところで、世田谷区の障害者雇用を特色づける取組み事例についてうかがいたい……そんな願いに応えてくださったのが「株式会社オオゼキ」だ。世田谷区を中心に都内全域、神奈川県、千葉県に店舗展開する「町のスーパーマーケット」。1957年創業で、2018年度の世田谷区雇用促進フォーラムにおいて感謝状が贈呈された地元の有力企業でもある。オオゼキは、各店長が独立した経営者として店づくりを行い、それぞれの売場担当が「顧客」ならぬ「個客」主義を徹底して追求した結果、自ずと品揃えや売り方が独自の進化を遂げていくという経営理念を有している。また、「全ての従業員が一人ひとりのお客様に正面から向き合い、謙虚に教えを請い、全身全霊でお応えする」という姿勢が徹底されており、なるほど、北沢タウンホールから数分ほどの同社管理本部を訪れた私たちにも、社員のみなさんの精一杯の歓迎の挨拶が響いてくる。るというもの。「取組みはまだ初期段階だが、中小企業や商店が多い世田谷区の特徴を活かせると思う」と話す。石田さんは、これを「普段着の障害者雇用」と名づけている。かしこまった、ハードルの高い取組みではなく、地域のありふれた風景として障害者雇用が実現することへの熱い願いがこの表現に込められている。「協議会活動を通して石田さんご自身に生じた変化は?」との問いかけに、石田さんは「当初は障害者雇用を普通の雇用と区別して考えていた。しかし中学校卒業者の70%が3年後には退職している現実を聞き、障害の有無にかかわらず、雇用・就労については個人に合わせた対応を考え、ていねいに取り組む必要があると思うようになった。特別な対応ではなく、普通の意識で障害者雇用がなされる社会にならなければいけない」とふり返る。そのため、「数多くの企業が障害者を一人でもよいので雇用する社会の実現が望ましい」との思いが一層強くなったという。障害者と健常者が交じりあって働く職場が増えていくことを石田さんは展望する。障害者に関して活動する団体の活動が雇用に直結しないものであっても、それらの団体の活動を協議会が知り、会員団体のそれぞれの立場から情報を収集・分析し、障害者の対応に知識と経験がないでは、特に初めて障害者雇用に取り組む企業のハードルを低くすることを心がけている」と強調する。石田さんは協議会活動で、世田谷区の障害者雇用の担当者と議論するなか、障害者の少日数(週1日・2日)・短時間(1時間・2時間)勤務の実現に思いが至ったという。就労意欲があっても短時間や少日数しか働くことができない障害者がいるので、そのような障害者が働ける場所を提供したいという願いがある。また、それは障害者が働く姿を同じ地域のなかで見られる状況の実現であり、区民の多くが障害のある人の存在を身近に感じることができ、共生社会の発展にも寄与す協議会活動を通した自身の変化地域ネットワークの実践例を訪ねてモットーは「普段着の障害者雇用」 世田谷区が障害者の就労支援を進めるなかで、地域における障害者の雇用促進を図るため、賛同する多くの団体との連携により2003年に設立。◆構成団体 地域の産業団体、特別支援学校、区、ハローワーク、 関係機関、福祉施設ほか団体◆協議会の取り組み・障害者雇用促進の啓発活動・障害者雇用に向けた事業者・施設・関係団体・行政の連携とネットワークづくり・工賃アップに向けた取組み、支援◆協議会の活動・総会(年1回)・雇用支援プログラム(年数回)・雇用促進フォーラム(年1回)・企業啓発(随時)・常任幹事会(年3回程度)◆障害者雇用支援プログラム 協議会、ハローワーク渋谷(渋谷公共職業安定所)、世田谷区の共催により実施している企業向け研修プログラム。 「障害者を雇用したいけれど、何から手をつければいいのか?」、「障害がどういうものか分からない」など、障害者雇用を考える企業の不安や疑問にこたえ、障害理解や障害者雇用を促進するため、障害者施設や特別支援学校の見学会、障害理解や障害者雇用制度に関する研修会などを、年間を通して実施。表 世田谷区障害者雇用促進協議会の概要働く広場 2020.7出典:世田谷区ホームページ.世田谷区障害者雇用促進協議会   (2019年8月1日最終更新)から筆者作成23

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