働く広場2020年7月号
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障害者との交流を持つ活動をしていることがわかったという。雇用に直結する活動だけでなくても、さまざまな団体の活動を知り、そのことを通して障害者理解を深めることができると石田さん。多様な障害のある人が「さまざまな働き方を通して仕事で社会とつながりを持って生きていくことで人生が豊かに感じられる」との考え方で障害者雇用をとらえてみると、「世田谷区は『普段着の障害者雇用』の実現にとってよい環境にある」。この共通の問題意識で、協議会の歩みはさらに力強くなるのだろう。新型コロナウイルス感染症拡大で、『働く広場』の取材も厳しい状況が予想されたなか、取材先のみなさまのご協力で、感染予防に最大限配慮しながら実現できた。協議会会長の石田さんとは、遠隔でのやり取りとなったが、地域に根ざして、あらゆる関係者を包み込む包括性の高いインクルーシブな働き方への確実な手応えを感じた。新型コロナウイルスによって人と人との距離が広がり、情報伝達も機械的になりがちであるが、方法や機会は変わっても、やはり、人と人、組織と組織をつなぐ思いと目標の共有化の重要性をかえって浮き彫りにしたともいえる。世田谷区の障害者雇用の推進に向け、地域に根ざした力強い活動は、未み曽ぞ有うの状況を乗り越えていくに違いない。る方は複数の支援機関に登録していて、知らない間に就職(あるいは離職)していてもその情報が共有できない、そもそも支援対象者の特性により適切に対応できる機関や支援があるのではないか……といった課題が見えてきた。そこで、支援対象者を障害者、生活困窮者、生きづらさを抱えた若者と分けるのではなく、「働きたくても働きづらい方」として包括的に支援する考えに基づき、世田谷区版ユニバーサル就労の構築を目ざすことになった。2020年度から具体的な施策として「せたJOB応援プロジェクト」を開始し、求人情報の共有などにより連携した支援を行いながら、「ユニバーサル就労」の構築に向けて継続して検討を続けるという。同プロジェクトの概要は、図に示す通り。実はこの世田谷区のプロジェクトへの期待は、協議会会長の石田さんのインタビューにも登場する。「世田谷区は居住地域であり、中小企業や商店街が多いなどの特徴があるので、例えば障害者雇用の広がりを法定雇用率達成義務のある企業で線引きすると、障害者雇用が地域に広がる状況にはならない。また居住地域としてはよくても移動が厳しい障害者にとっては近くに職場が少なく、テレワークを除くと就労としてはよい環境とはいえない」。世田谷区にある10近い商店街が、障害者雇用現場の取材を終えて、再び世田谷区の八木さん、林田さんと今後の区の障害者雇用・就労の展望について意見交換をした。区の障害者就労の課題は、「週20時間以上の求人条件では働くことのできない人や在宅勤務を希望する障害者の就労支援だ」と八木さんはいう。世田谷区は、障害者のみならず、生活困窮者、生きづらさを抱えた若者に対してもそれぞれの働き方を目ざす多様な支援施策を展開している。こうした就労支援機関の充実の反面、複合的な課題のあ多様な働き方への展望協議会から見た多様な就労機会取材を終えて出典:世田谷区障害福祉部障害者地域生活課 八木早知子氏提供資料から筆者作成働く広場 2020.7オオゼキ下北沢店のバックヤードで働く鈴木毅さん図「せたJOB応援プロジェクト」の概要せたJOB応援プロジェクト事業の概要切り出した業務を4つの働き方に分類ユニバーサル就労の実現をめざす障害者就労支援センターがその専門性を活かして区内企業等の開拓を行い、週20時間以上の就労以外の多様な働く場を創出。その条件で働きたい人をつないで継続的な就労を支援対象者就労意欲はあるが、一般的な求人等で就労することが困難で、区の障害者就労支援施設等に登録され、そこからの支援が受けられる人①通ってJOB:企業等で短時間で働く②自宅でJOB:内職やテレワークなど自宅で働く③集つどってJOB:みんなで集まって共同作業④単発JOB:単発又は短期間の業務◆分類された業務は、就労支援ネットワークを通じて各就労支援施設等で共有◆就労支援ネットワークでマッチングができなかった場合には、障害者就労以外の分野の各支援機関等と一層連携して支援を行う25

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