働く広場2020年7月号
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働く広場 2020.7「親なきあと」相談室の渡部伸と申します。障害者の家族の不安や悩みが少しでも軽くなるように、講演会やメール相談、著書や雑誌の記事などでさまざまな情報をお伝えしています。障害のある子の家族にとって「親なきあと」は共通の、そして永遠の課題です。ほとんどの親は、自分たちがいなくなったあと子どもの生活はどうなるのか、不安を抱いています。ただ、その不安について、具体的に説明しづらい方が多いと思います。自分たちが面倒を見られなくなった、あるいはいなくなったあとのことなので、何から手をつければよいのかわからず、漠然とした不安を募らせているというのが多くの親たちの現状だと思います。私自身も障害者の親なので、同じように不安は抱えています。でも整理してみると、それらは三つの課題に集約できることに気がつきました。①お金で困らないための準備をどうするか②生活の場はどのように確保するか③日常生活で困ったときのフォローをどうするかそれぞれの課題について、利用できる行政の福祉サービスがあり、民間の法人などが提供しているサービスがあり、また地域独自の取組みがあります。課題が整理できて、それに対応する方法がいろいろあること、そして新しい制度やサービスもできていることを知れば、不安そのものは消えることはありませんが、自分たちがこれからやらなければいけないことが見えるようになるのです。障害のある子がいる親御さんの多くは、「親なきあと」も子どもが安心して生活していくためには、どのくらいお金を残せばよいのだろう、という不安を抱えているのではないかと思います。私も個別相談や講演会などで、よくこの質問を受けることがあります。そういったときに、私はこのようにお答えしています。「お金は必要以上に残さなくても大丈夫。それよりも準備してほしいことがあります」準備してほしいことというのは、〝残したお金が本人の生活のために使われる仕組み〞のことです。知的障害のある40代の男性が、仕事帰りに数カ月間にわたりほぼ毎日、客引きにバーなどの飲食店に連れて行かれ、貯めていた1500万円を失ってしまった、という事件が報道されました。たとえお金があったとしても、それが安全に管理され、本人のために使われなければ意味がありません。重要なのは、本人の将来の生活を支える仕組みです。お金の残し方と、そのお金の管理の「親なきあと」の課題は三つそれぞれの課題に対応する制度や仕組み「親なきあと」相談室主宰/行政書士・社会保険労務士渡部伸「親なきあと」問題とは 〜障害者が長く働くために〜2

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