働く広場2020年7月号
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働く広場 2020.7ます。もちろん、きょうだいなどの親族やご近所の方もいるでしょう。こういった方たちがチームで支える仕組みができると理想的です。普段は必要なくても、例えばグループホームに入居する、病院に入院または退院するなど、本人に関する重大な決定をする場合に、本人と本人にかかわる人たちが話し合う環境があればより安心です。こういったチームに、就労先である企業の方も何らかの形でかかわることが、本人の働き続ける大きな力になるのでは、と考えています。会社はあくまで仕事の場です。本人のプライベートな部分にどこまでかかわってよいのか、判断がむずかしいこともあると思います。ただ、地域の支援機関と連携することで、本人の家庭の状況も把握でき、会社での不調にも対応しやすくなるのではないでしょうか。ぜひ無理のない範囲で、ご支援いただければと思います。渡部 伸(わたなべ しん) 1961(昭和36)年生まれ、福島県会津若松市出身。 「親なきあと」相談室主宰。行政書士・社会保険労務士。「渡部行政書士社労士事務所」代表。「世田谷区手をつなぐ親の会」会長。主な著書に、『障害のある子の「親なきあと」~「親あるあいだ」の準備』、『障害のある子の住まいと暮らし』 (ともに、主婦の友社刊)、『まんがと図解でわかる障害のある子の将来のお金と生活』(自由国民社刊)などがある。●「親なきあと」相談室 http://www.oyanakiato.com/仕方の両面から考えておく必要があります。お金の残し方としては、相続で争いごとが起こるのを防ぐためにも、遺言を書いておくことが重要です。また、遺産相続により、障害のある子がいきなり慣れない大金を手にしてしまう事態を避ける方法として、信託(※)の活用があります。信託の仕組みを利用すれば、親が残したお金から定期的に一定額を子どもに手渡してもらうことができます。この信託の仕組みを手軽に利用できるものとして、信託と生命保険を組み合わせた商品も登場しています。次に、そのお金をどう管理するのか。その主な仕組みとして成年後見制度と日常生活自立支援事業があります。これらの仕組みを、本人の判断能力や家族の状況などに応じて、適切なものを組み合わせて利用することになります。障害者が親と離れて生活する場合の住まいは、法制度の変化にともない、大規模な入所施設からグループホームでの地域生活へと変わってきています。さらに、福祉サービスなどを組み合わせて一人暮らしを選択するケースも少しずつ増えています。日常生活のフォローについては、特に中度軽度の障害者を対象に、自立生活援助や就労定着支援といった、一人暮らしや就労している障害者を支援しようという新しい福祉サービスが2018(平成30)年からスタートしています。「親なきあと」に本人を支えるためには、親が元気な間に、お金のこと、住まいのことをしっかり準備することが大切です。しかし親が面倒を見られなくなったあと、一番大切なのは、地域とのつながりです。障害者雇用を積極的に行っている企業の方にうかがうと、親が元気な間は安定して働いていた障害のある社員が、親が体調を崩して入院したり、亡くなったりして、生活の状況が変わってしまうと、定時に出社できなくなったり、結果的に退社してしまったりするケースは多いということです。こういったことを防ぎ、本人が「親なきあと」も働き続けるためには、周囲のサポートが重要になってきます。障害者本人には多くの方がかかわっていると思います。行政の担当者や計画相談事業者、就労先の担当者や障害者就業・生活支援センターの担当者、移動支援やグループホームなど、利用している福祉サービスの支援者……成年後見制度を利用していれば成年後見人などもい本人を支えるのは地域のつながり※ 信託:契約などにより財産を信頼できる人に託し、受益者のために管理、運用、継承、処分などをしてもらう制度3

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