働く広場2020年7月号
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働く広場 2020.7な人が何人いて、どんな仕事をしているか」を把握していたため、部署を直接回りながら業務の提案をしていったそうだ。「仕事の切り出しを進めるときは、上層部と現場の両方にしっかりコミュニケーションをとって理解をしてもらうことも重要です。でなければ『絵に描いた餅』状態になってしまいますから」また、初めの1年間は、委託元の部署から代金は受け取らず、費用は人事で負担する形をとった。あらかじめ事業計画で「障害者雇用促進費」を予算化した。「最初から見積金額などのハードルを上げてしまうと期待値も高くなります。費用の負担がないとわかると、人手不足の現場から仕事が来るようになりました」封入・封かん作業など単純な定型業務からスタートしたが、納期が遅れたり、納品物の品質が不安定になることもあったりした。「間に合わないときは私たちも休日出勤して作業のサポートをしたこともありました」と井上さんは明かす。そこで、作業のマニュアル化や納品前チェック体制を徹底させ、徐々に水準を上げていった。満を持して、翌年度から委託業務に「課金」したところ、注文は半減した。そのため、もともと評価をしてくれていた部署に出向いて「仕事の深堀り」をするなどして業務を拡大。すると3年目には、半減分も解消するほどになったという。パーソルチャレンジでは現在、請け負う業務については市場価格に沿った金額で請け負っている。ただし「グループ各社がすべき雇用を、特例子会社が進めている」という考え方のもと、2017年からは、本来の雇用率に満たないグループ会社に「業務委託費」もしくは「雇用管理費」を請求している。「基本的には、各社で雇用に取り組むことが前提ですが、不足分を特例子会社が代わりに雇用促進するための費用として、雇用管理費を年度予算で提示し、特例子会社への業務発注額が増えると相殺される仕組みを導入しています」 パーソルチャレンジは当初から、事務系の受託業務とともに障害者専門の人材紹介・雇用支援を事業の柱としてきたことも大きな特徴だ。「私自身、設立したころは障害者雇用の知識がほとんどなく、ほかの企業も同じ課題を抱えているだろうと思っていました。人材業界の子会社として、自分たちの経験・ノウハウをもとにしたサービス提供にもつなげていこうと考えました」実際に2009年に障害者の人材紹介サービス「dドゥーダodaチャレンジ」が始まり、年間1万人の登録者をもつ大型事業に成長した。法人クライアントは2000社を超え、累計100社以上で特例子会社の設立から研修、採用代行・定着支援までと多彩なコンサルティングサービスも行っている。また2012年から開設してきた就労移行支援事業所(2019年から「ミラトレ」と命名)は首都圏10カ所、関西2カ所まで増えた。2016年には発達障害のある学生向け「コミュニケーション・サポート・プログラム(CSP)」をスタート、2019年にはIT特化型の就労移行支援事業所「Nニューロeuro Dダイブive」も開設。パーソルチャレンジが積み重ねた実績と、障害者雇用を取り巻く時代の流れに沿いながら、多様な事業を展開してきた。就労系障害福祉サービス機関や行政機関とも連携しつつ、年間1000人を超える障害者雇用にかかわるという。 パーソルチャレンジの受託サービス事業部は全国に7拠点あり、在籍している約400人の障害者は業務内容によって7つのチームに分かれ、いまは全体で計100種類以上の業務を請け負っている(図1)。東京都港区の田町にある受託サービス第二事業部で、社員数約200人(うち8割が障害者)を率いるゼネラルマネジャーの野の原はら斗と夢むさんに話を聞いた。「知的障害のある方は、軽作業系が中ノウハウをもとにサービス提供事務系100種類の仕事ゼネラルマネジャーの野原斗夢さん(写真提供:パーソルチャレンジ株式会社)6

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