働く広場2020年8月号
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抵抗なしに進めていけるのではと思います。清原 障害者が働きやすい職場は、だれもが働きやすい職場だと思います。障害者に遠慮するというか、腫はれ物ものに触るような雰囲気を感じさせる職場はよい職場環境とはいえないですね。「サポートや配慮はするが、特別扱いはしない」と堂々といえる企業、職場環境を整えている企業、そういう現場に出会うと嬉しくなります。障害者雇用は、企業トップの理解、担当者の熱意がとても大切だと思っていますので、『働く広場』でそういう現場をお伝えして、障害者雇用を促進するヒントになればと考えてきました。小山 一つに偏ることもない。伝達方法は紙でもITでも、やり方によっていろんな方法があっていいんですよ。それを紹介してきた『働く広場』の果たしてきた役割は大きいですね。清原 2年前には国や自治体の障害者雇用率の水増しが大きな問題になりました。急きゅう遽きょ数千人あまりを雇用しましたが、大半は非常勤です。退職者も出ています。定着するために何をすべきか、どうすべきかを考えてほしいですね。小山 障害の有無に関係なく生きていける世の中にしていきたいものです。結局は「人」が最大の問題なんです。すべて最後は「人」に落ち着くんです。のが『働く広場』ですよ。ほかの人が知らない世界を紹介し、発掘してきたと思っています。清原 特例子会社は障害者の雇用促進を目的とした制度ですが、その特例子会社をつくらずに雇用を拡大してきた企業も注目されます。例えば、東京都の「東京海上日動システムズ株式会社」(2018年4月号「職場ルポ」で取材)。フレックスタイム制の導入や、職制にかかわらない社内での「さんづけ」、社長室のドアはいつもオープンなど、会社としての「風通し」がいい。車いすの人たちがシステムエンジニアとして勤務していますが、知的障害のある人が働く「カフェ」もつくったんですよ。それも休憩スペースの中心に。カフェでは会議室へのデリバリーや職場へのワゴン販売もしています。なかでも目を引くのが、健常の社員に入社時と課長になるときには必ずこのカフェで1日店員を経験させていることです。その先生役は知的障害のある人。健常者の働く意欲向上にもつながり、よい結果を生んでいます。カフェの設置に合わせて社内の自動販売機を撤去しなかったのも、会社の本気度の現れでしょうね。小山 もちろん、特例子会社があったから障害者雇用が進んだ面も欠かせません。見ているとベンチャー企業系の障害者雇用はスピードがありますね。若いから(2004年10月号「グラビア」で取材)。石いわ見み神かぐら楽の衣装をつくっているのですが、芸能人からも注文が殺到し、数カ月待ちの状態でしたね。伝統芸能を受け継ぐ地域貢献はすごいものがありました。樋口 私も心に残った一カ所を。私のおすすめは「富士重工業株式会社」。いまはスバルですが、そこの群馬県太田市の工場を取材したときです(2003年9月号「編集委員が行く」で取材)。それまでは障害者の法定雇用率を下回り、たいへん苦慮していましたが、アメリカから帰国した当時の総務部長が、一人の車いすの女性社員を雇用し、彼女に工場すべてを車いす目線でチェックしてもらい、ユニバーサル化していったそうです。それを機にスバルは大きく変わった。通常の生産ラインもユニバーサル化を進め、重いエンジンミッションを女性でも簡単に取りつけられるように改良した治じ具ぐなどは、当時同じ自動車業界にいた私も驚きの連続でした。「障害者雇用のため」をきっかけに始めた治具開発が、障害者・健常者を問わず、だれもが使いやすい物へと進化していった素晴らしい事例でした。小山 そういう人たちを取り上げてきた『働く広場』の果たしてきた役割は大きい働く広場 2020.82018年4月号掲載 職場ルポ「東京海上日動システムズ株式会社」24

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