働く広場2020年8月号
27/36

やって乗り切っていくか。それは一人ではできないことで、多くの人たちの支援と協力がなければむずかしくなる。今回のお二人のインタビューからいえることは、文中でも幾度となく申し上げてきたが、障害者雇用の原点は「人」である。文明や科学がいかに進化しても、人を雇用するのは「人」であり、素晴らしいといわれる企業にはやる気と活力、そして周囲を引っ張って行く人が存在する。人には心がある。障害のある人を雇用して、彼らとともにどう成長し、どう実践していくかを決めるのは、そこにいる人たちである。歴史的に見ても、たしかにそうした人がいた企業は発展し、そこで育った人が次の世代をリードしてきたのである。そういった意味では、小山さん、清原さんのお二人も時代をリードし、その時々を見届けてきた証人であると強く感じる。最後に、今回のインタビューに関して、岡山障害者職業センターの方々には会場をお借りするなど、たいへんご協力をいただきました。誌面を借りて御礼申し上げます。(インタビュー写真:官野貴)小山 いまは現場を知らない人が多い。大学の先生をはじめ障害者を送り出す方が、まずは現場を知ることが大切です。「雇用の原点は現場」だと認識し、いろんなケースを見て、いろんな雇用をしてほしいと感じます。樋口 いろいろなお話をありがとうございました。お二人の「想い」が読者のみなさんに少しでも伝わればと思います。 日本の障害者雇用が本格的に始まったのは、1965年に大分県別べっ府ぷ市にある「社会福祉法人太陽の家」の創業者、中なか村むら裕ゆたか先生の提唱した「保護より機会を」が原点です。それから55年。いま、新型コロナウイルス感染症という新たな難題を抱えて、日本や世界の姿が大きく変わろうとしています。しかし、いかに世の中が変わっても、変わらないのは「そこには人がいる」という事実です。人がいるかぎり、知恵を出し合い挑戦を重ねていけば、解決できないことはないと信じています。新型コロナウイルス感染症の影響で、今後は、従来とは違った「働き方」への移行が進むと予測される。障害のある人のなかには変化に弱いといわれる人たちもいるが、これからどう樋口 今回の新型コロナウイルス感染症は、従来からの雇用のあり方を大きく変えようとしています。テレワークや在宅勤務の推奨などで、人との接触を避けようとする動きが加速していますが、すべての業種でできるとはかぎりません。進めやすい業種もあるとは思いますが、製造業や農業など現場で体を使う仕事はそうはいきません。また、新型コロナウイルスの影響で多くの人が職を失い、障害者雇用どころではなくなっている事業所もあります。そのようななかで、今後の障害者雇用はどうなっていくのか、どうあるべきかについてのお考えをうかがいます。清原 今回の新型コロナウイルスで世の中がたいへんギスギスして、余裕がなくなっています。こういうときだからこそ、障害者雇用は形にはまったものではなく、融通の利く臨機応変な形であってほしいと思います。十人十色、一人十色。いろいろな人がいるのが社会であり、一人の人が多様な色を持ちながら、ともに生きる社会であってほしい。そのなかで、障害者雇用も進められればよいと感じます。新型コロナ後の雇用はどうなる結びに働く広場 2020.8お二人のお話を聞く樋口編集委員25

元のページ  ../index.html#27

このブックを見る