働く広場2020年8月号
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働く広場 2020.8手な判断や安易な線引きをしないよう、行動指針もつくりました。キーワードは『あせらない』、『あきらめない』、『あなどらない』です」コーチなど41人が環境衛生士と障害者職業生活相談員の資格を取得し、12人がジョブコーチ(職場適応援助者)でもある。さらにジョブコーチスキルを向上してもらうため、障害児者の学習指導専門家を招いた学習会を各センターで行っているそうだ。最近は、知的障害のある社員から、チームのまとめ役ができそうな人や、事務的な仕事を担当できる人も出てきた。「今後は、清掃業務のリーダーになってもらったり、コピー機のメンテナンスや事務補助などの仕事をしてもらったりできるよう、職場環境を整えていきたい」と岡本さんは話す。 ハーティでは、2013年から、知的障害のある社員を対象に、勤務時間を使って公く文もん式しき学習を行っている。きっかけは、やはり岡本さんが個人的に参加していた勉強会だ。「ある社会福祉協議会が、施設関係者向けに『働く力を向上させるためのセミナー』というのを開催していたので参加しました。そこで隣に座っていたのが公文の方で、知的障害者向けの就労移行支援事業所で、公文式学習を行っていると聞き、見学に行きました」岡本さんは、障害者雇用を進めるなかで、「社員が一日でも長く、社会の一員として能力を最大限に発揮しながら働き続ける」ための効果的な支援方法も必要だと感じていた。特に重度の知的障害者にとっては、心身の老化・退行の防止や、言葉によるコミュニケーションの向上も重要だと考えていたそうだ。公文式学習の科目は国語と算数で、午後の1時間をあてた。一人ひとりのペースに合わせて取り組み、コーチが採点役を務める。実際にやってみて、全体としてもっとも効果的だと感じたのは、メンタルケアだという。「例えば、午前の業務中に、ちょっとした失敗をしたり、コーチから注意をされたりすると落ち込みますよね。でも午後にプリント学習に取り組み、コーチから赤ペンで100点と大きな〇を書いてもらって『がんばりましたね』と返されると、笑顔で一日を終えられます」人によって、コミュニケーションがぐっと向上したケースもある。「音読によって滑舌がよくなったのか、いままで聞き取りにくかった単語が急にクリアになって驚いたことがあります。国語のプリントに取り組み続けた結果、日ごろの会話で語ご彙い力りょくが自然と増えた人もいて、社員たちの伸びしろを日々感じています」と岡本さんは手応えを語った。 身体的に長く働き続けるための取組みが、体操とヨガだ。「社員のなかには、つま先があがらないとか前傾姿勢で歩くとか、体の使い方が偏かたよってしまっている人が少なくありませんでした。無意識に無理な動きをする人もいました。こうした動作を続けていると、第一にケガをしやすいですし、身体機能が衰えやすくなるといった不安がありました」ハーティでは、専門家に依頼して、体幹を整えるオリジナル体操を開発。毎日、清掃業務の前後に行っている。さらに身体認知機能を向上させるヨガの指導を月ヨガで身体機能改善学習支援の導入真剣な眼差しでプリント学習に取り組む(写真提供:株式会社ドコモ・プラスハーティ)週1回のヨガを通して身体機能改善に取り組む(写真提供:株式会社ドコモ・プラスハーティ)池袋センターで働く宮廻高虎さん7

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