働く広場2020年9月号
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働く広場 2020.9ありません」と話す。菊池さんについては、「毎日のルーティンワークのなかに、違う業務を依頼すると納得してくれないことがあります。そうすると、やっぱりその業務をやっていなかったということもあるので、折を見て確認し、場合によってはくり返し念を押すこともありますね」という。作業上で入力ミスなどが生じたときは、菊池さん本人から「なにかいつもと違う」といった形で申告があるそうだ。「伝票のミスの原因が取引先にありそうなときは、電話をかけて確認してもらうところまでやってもらいます。発注も含めて電話をかける作業は、実は本人はやりたがらないのですが、それも仕事だからといって、なるべくやってもらいますし、実際にできます。10回のうち2回ぐらいは通話の途中でむずかしくなってくることがあり、そのときは交代するようにしています。取引先にも菊池さんのことは理解してもらっています」日ごろ菊池さんとは、自分の子どもがやっているゲームについての雑談をしたり、平野さんとはお互い好きな車の話をしているそうだ。 本社の障害者雇用を実質的に担当し、今回の取材を調整してくれたのは、総務人事部で総務グループマネージャーと人事グループマネージャーを兼務する斉さい藤とう直なお之ゆきさんだ。他部署から異動してきたのは2014年だが、前任者から障害者雇用について特段の引継ぎはなかったという。ただ本社内でたまに顔を合わせたり、なんとなく話を聞いていたりしたので、「最低限の知識だけは、本などで勉強しました」と明かす。それからは、現場でのトライアンドエラーをくり返しながら、仕事の任せ方やトラブル回避の方法などを見つけてきた。「実感しているのは、それぞれ一人の人間として真剣に向き合い、対応することが一番だということです」とふり返る。一方で、かぎられた会社組織では、当事者たちのフォローをはじめ、さまざまな対応が斉藤さんに集中しやすいのも事実だ。そんな斉藤さんが頼りにしている相談先の一つが「あきる野市障がい者就労・生活支援センターあすく」(以下、「あすく」)(東京都)だという。平野さんらが登録しており、就労定着支援を行っている。「あすく」について、斉藤さんは次のように話す。「職場で私がよかれと思って対応したことに、本当に問題はなかったのかと自問自答することも少なくありません。そのまま一人で抱え込むと孤独感にもさいなまれてしまいます。少し困ったなと感じたときは『あすく』に連絡をして、本人と面談してもらったり、私がアドバイスをもらったりしています。いつでも頼れる先があるというのは、心強いですよね」「あすく」のセンター長は、本誌の編集委員も務める原はら智とも彦ひこさん。平野さんの通っていた青峰学園でも2009年の開校時から4年前まで進路指導を担当し、平野さんとはいまも定期的にプライベートで支援機関との連携総務人事部総務グループマネージャー兼人事グループマネージャーの斉藤直之さん8

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