働く広場2020年9月号
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働く広場 2020.9 ここまでに述べたことをふまえ、障害者職業総合センターでは、高次脳機能障害者の職場適応促進を目的とするCPTプログラムを開発することとしました。従来のCPTとの違いは、高次脳機能障害者と同じ職場で働く人(上司や同僚、企業在籍型ジョブコーチ、障害者職業生活相談員など)を対象とし、職場でのコミュニケーションに焦点をあてることです。 プログラムの開発にあたっては、まず、従来のCPTを参考にしながら試行版プログラムを作成しました。プログラムに含まれる演習課題は、職場を舞台として設定しました。プログラムの試行とその結果をふまえた改良を2回くり返し、最終的に「よいコミュニケーションのための15のスキル」を骨子とした7時間30分(休憩時間含む)のプログラムを完成しました。「よいコミュニケーションのための15のスキル」の内容やプログラムの時間割、配布資料は、「調査研究報告書№151」(※)に掲載しています。ご関心のある方はどうぞご参照ください。 企業などにおいて、高次脳機能障害のある人の上司や同僚、企業在籍型ジョブコーチ、障害者職業生活相談員などとして働く28名の方々に 病気や怪我のために脳の一部が損傷されたことによる認知機能の障害を「高次脳機能障害」といいます。認知機能には、臨機応変に周囲の情報に注意を向ける力や、情報を記憶する力、言語を理解したり組み立てたりする力などが含まれます。これらの認知機能は、コミュニケーションにおいて重要な役割を果たしています。高次脳機能障害のある人の多くは、日常生活や職業生活においてさまざまな程度で周囲とのコミュニケーションに困難を抱えています。コミュニケーションは人と人の間に生じるものであるため、コミュニケーションの困難は、本人の認知機能障害だけによるのではなく、周囲の環境との相互作用により生じるものであるといえます。 コミュニケーションパートナートレーニング(以下、「CPT」)は、高次脳機能障害のある人を取り巻く人的環境に着目した支援技法です。高次脳機能障害の特性に応じた適切なコミュニケーションの取り方について、周囲の人々に対して情報提供を行い、練習の機会を提供することにより、高次脳機能障害のある人とのコミュニケーションをよりよくすることを目ざします。CPTは国内外で広く取り組まれており、高次脳機能障害のある人の生活の質の向上や地域社会への統合の促進に関する成果を上げています。しかし、高次脳機能障害のある人の職場適応の促進に焦点をあてたCPTの取組みは国内外を見渡しても見あたりません。高次脳機能障害者の職場適応促進を目的とした職場のコミュニケーションへの介入―コミュニケーションパートナートレーニング―研究企画部研究部門 社会的支援部門※「調査研究報告書No.151」は、https://www.nivr.jeed.or.jp/research/report/houkoku/houkoku151.html よりダウンロードできます高次脳機能障害とコミュニケーションの困難1コミュニケーションパートナートレーニング(CPT)2高次脳機能障害者の職場適応促進を目的とするCPTプログラムの開発3CPTの効果検討4検索nivr 調査 15128

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