働く広場2020年9月号
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働く広場 2020.9株式会社キズキは「何度でもやり直せる社会」の実現を目ざし、さまざまな生きづらさに寄り添う事業を展開しています。不登校や引きこもり経験者、中退者の学び直しや受験への個別指導を行う「キズキ共育塾」を運営し、全国に7校舎を構えています。また、全国で13の自治体からは生活困窮者などへの支援事業を委託されています。そして2019(平成31)年4月には、うつや発達障害による離職者のための就労移行支援を行う「キズキビジネスカレッジ」を立ち上げました。今回はキズキビジネスカレッジに焦点を当て、設立した背景や支援する立場として伝えたいことをお話しします。私は軽度の発達障害があり、幼少期から多くの症状が現れていたように思います。運動やその場の空気を読むことが苦手で、それを理由にクラスではいじめられていました。ほかにも人間関係を中心に生きづらさを抱え、持って生まれたものに絶望する日々を過ごしました。しかし、大学進学を転機に新たな友人や先輩の優しさに触れ、「人間の尊厳」を取り戻していきました。充実した大学生活を過ごし、卒業後には総合商社に入社しました。ですが、4カ月後にうつ病を発症し、休職。自分が思い描いていた仕事と、実際の業務内容がかけ離れていたことが大きな理由です。休職中は家に引きこもり「二度と社会には出られないのではないか、『失敗者』になってしまったのではないか」と自分を責めました。同時に「それでもやはり、ビジネスパーソンとして社会で活躍できる仕事に就きたい」という思いもありました。ですが、当時はそういった思いをサポートしてくれる就労移行支援を見つけることができませんでした。その後、私は起業して「株式会社キズキ」を設立。2019年に「キズキビジネスカレッジ」(以下、「KBC」)を立ち上げます。KBCは、専門スキルの習得と就職を支援するビジネススクールです。「就労移行支援」という障害福祉サービスの枠組みを利用して、サービスを提供しています。KBCの特徴としては、「多様な進路への就職を支援できる」ことが挙げられます。就労移行支援では、軽作業や一般事務への就職を想定していることがほとんどですが、世の中にはさまざまな職種や働き方があります。利用者の方との「個別面談」を行い、本人が望む働き方についてヒアリングをすることで、メンタル面のサポートからていねいに取り組んでいます。また、習得できる分野は多岐にわたるので、一人ひとりに合ったスキルを探すことができます。具体的には、会計・ファイナンス、マーケうつ病で休職した当時の自分が求めていた場所離職者の「もう一度働きたい」に応える人間の尊厳を最大限守る支援を広げたい株式会社キズキ代表取締役社長、NPO法人キズキ理事長安田祐輔2

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