働く広場2020年9月号
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働く広場 2020.9バーもしていけるようになりたいですね」 総務グループの井い塚づか千ち恵え子こさんは、菊池さんや平野さんを入社時から知る同僚だ。当初は、漠然とした不安があったという。「彼らが、仕事上でどこまで何ができるのか。できなかったことについてどう注意すべきか。本人ができないといっていることについて、実はもう少し努力すればできるかもしれないのか、それとも無理をするべきではないのか。その線引きや対応の仕方については本当に手探りでした」障害特性についてほとんど知識もなく、特別に研修を受けたわけでもなかったため、自分なりに試行錯誤していったそうだ。例えば菊池さんは、たまに作業の優先順位や、やり方を変えたほうがいいことがあっても自分で判断できないため、周りの人が軌道修正する必要があるとわかった。「ただし、作業の修正にもなかなか応じられない頑固な性格のところもあり、『とにかくやってみて』と強めに誘導し、結果を見せて『ほらできたでしょ』と納得してもらうようにすることもあります。日々のやり取りを重ねていきながら遠慮なくいい合えるようになり、菊池さんにとっては、お母さん的な存在になっているかもしれません」と、井塚さんは笑いを交えながら話してくれた。平野さんについては、作業の目標やルールを決めておけばしっかり維持管理できるので、その長所を活かして仕事を担当してもらうようにしている。井塚さんは2013年半ばに他部署へ異動し、2019年に総務グループに戻ってきたが、「その間に、平野さんはずいぶん仕事の幅が広がりましたね」と成長ぶりを語る。井塚さんに、これから障害者雇用を始める職場の人へのアドバイスを聞いたところ、こう話してくれた。「私の経験からいうと、深く考えないことかもしれません。一人ひとりの人間が相手ですから正しいマニュアルなんてありませんし、自然体で向き合いながら、その場その場で、対応を考えていけばいいと思います。また、自分の気持ちが煮詰まるようなら、いったん離れて冷静になる時間をつくることも必要ですね。知らない間にストレスがたまっていくのもよくないですから」井塚さんは、障害者向けにバスケットボールをボランティアで教えている人や看護師の友人に時折話を聞いてもらい、アドバイスももらっているそうだ。 同僚として平野さんや菊池さんと一緒に仕事をすることが多いという法ほう師し清きよ康やすさんは、3年前に総務グループに配属された。「2人ともすでに仕事に慣れていて、私のほうが業務を教えられることはあっても、こちらから新たに教えることは特に正しいマニュアルはない電話もかけてもらう総務人事部総務グループの法師清康さん7

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