働く広場2020年10月号
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働く広場 2020.10ることができます。複数の感覚に同時に働きかけることもできます。②双方向性がある 補完手段から働きかけてくれる「通知」機能を使うと、対象者に次にやるべき行動を知らせることができます。「メモリーノートに書いたが、見るのを忘れる」といった方には有効です。③身近な存在である 広く普及し、身近な存在になったパソコンやスマートフォンは、生活になじみやすいと考えられます。①アセスメント 対象者の認知機能や困り感、受障前の生活様式(ATをどの程度活用していたかなど)を、神経心理学的検査や質問紙、情報収集、行動観察により確認します。 記憶障害があると、新たな行動を学習することに困難をともなうため、受障前の生活様式を活かす視点が求められます。また、職場復帰を予定している場合は、復職後に想定される職務内容や職場環境を確認しておくことも重要です。②AT活用の提案と習得 アセスメント結果をもとに、どのような補完手段を活用するか検討します。ATの活用も選択肢の一つですが、さまざまな選択肢のなかから、予想される効果を理解したうえで、最終的には対象者が自分で選ぶことが大切です。 高次脳機能障害のある人が新たな行動を学習するには時間がかかります。プログラムでは、作業課題などに取り組むなかでATの活用をくり返し、効果を確かめます。状況によっては、 障害者職業総合センター職業センターでは、休職中の高次脳機能障害者を対象とした職場復帰支援プログラム、就職を目ざす高次脳機能障害者を対象とした就職支援プログラムを実施しながら、障害特性に起因する職業的課題への補完行動の獲得による作業遂行力や自己管理能力の向上および職業的課題に関する自己理解の促進を図るための支援技法の開発を進めています。 高次脳機能障害者の就労支援において、補完手段の習得は、日常生活や職業生活における自立性を高めることにつながる重要な目標の一つです。プログラムにおいても、メモリーノート(※1)などの補完手段の獲得に向けた支援を行ってきましたが、こうした外的補助具を用いた補完手段は、対象者が自ら補完手段に気づくことができなければ活用できない、といったところにむずかしさがありました。 そこで、近年、普及・高性能化が著しい、携帯電話やスマートフォン、パソコンの基本的な機能を補完手段として活用することを検討し、2019(令和元)年度末に、実践報告書№35「アシスティブテクノロジーを活用した高次脳機能障害者の就労支援」を作成しました。今回、その一部を紹介します。 アシスティブテクノロジー(以下、「AT」)を活用した支援に関する情報収集のほか、プログラムにおいて、ATをテーマとしたグループワーク、ATを活用した支援事例の収集を行い、支援の実施方法と実施上の留意点をまとめました。①視覚以外の感覚を使用できる ATを活用することで、視覚情報(文字)を聴覚情報(音声)や触覚情報(振動)に変換すアシスティブテクノロジーを活用した高次脳機能障害者の就労支援障害者職業総合センター職業センター※1 メモリーノート:予定やしなければならないこと、作業上の留意点、実際に行った行動などを記入し、記憶を補完するツール●開発の方法●ATを活用する意義●支援の実施方法と実施上の留意点28

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