働く広場2020年11月号
25/36

続いています。また、就職しても短期間で辞めていく人もいて、今後は求人活動と並行して、地域の福祉関係団体との連携も視野に入れ、職場定着の取組みが会社として必要になってきたと考えています」と話してくれた。 これからのインコムジャパンについて聞くと、「電子コミックは、テレビなどでいろんな会社の宣伝が行われるようになりました。その需要は、今後日本国内にとどまらず海外も含めて増加し、それに応える人材の確保が必要になってきています。電子コミックのオーサリングはテレワークも可能であることや、仕事内容もこれまで以上に多様化していくことが予測されますので、障害者の働く場として、障害の特性などにかかわらず多くの障害のある人が働く可能性を見つけられると思います」という。 さらに、自社作品の電子コミック作成を次の目標にしているなど、その夢を実現する意気込みを熱く語ってくれた。 藤井さんから、障害のある人の就労について、二つのテーマが投げかけられた。一つは「格差」。もう一つは「甘え」である。(1)格差 藤井さんは、障害のある人とない人のと同じ「高い壁」を痛感する。このままでは自分がダメになると転職を決意。まずは仕事に活かせる技術を身に着けようと、北九州市内にある福岡障害者職業能力開発校に入学して写植の技術を習得し、その後、足立写植に就職した。 葭原さんは足立写植の時代からすると30年以上印刷関係の仕事に従事してきた。「これまでの仕事を通して、出版業界のなかの変化に取り残されないよう、苦手なパソコンの理解と技術の習得に苦労しながら現在がある。インコムジャパンは以前の職場で感じた差別や格差もなく、働いたことの評価と報酬を得られることが何よりもうれしい」と語る笑顔のなかに、葭原さんの自信と満足感のようなものを感じた。(3)デジタルコンテンツ企画制作部部長の湯朝健二さん これからのインコムジャパンについて藤井さんの話を聞こうとすると、会社全体の業務管理を担当しているデジタルコンテンツ企画制作部部長の湯ゆ朝あさ健けん二じさんが藤井さんに呼ばれて私たちの取材に応じてくれた。 湯朝さんに、これからの障害者雇用についてうかがった。 「当社は創業以来、多くの障害者を雇用してきました。現在も求人をハローワークに依頼しており、今後も雇用は継続していきますが、なぜか応募者がない状況が約70社からオーサリング受注がある。受注した作品の一つである漫画「カイジ」の作者の福ふく本もと伸のぶ行ゆき氏本人も会社を訪れ、感謝を込めたサイン入り色紙が贈られていた。(2)車いすユーザーの葭原勝男さん インコムジャパンには2人の障害のある人が勤務している。社長の藤井さんと、デジタルコンテンツ企画制作部DTP組版担当係長の葭よし原はら勝かつ男おさんだ。 職場内は、飛沫が飛散しないよう、コロナ禍で材料が品薄でも創意工夫し、作業内容ごとにダンボールで仕切り、数人の机を一つのグループにまとめていた。21人の従業員がパソコンに向かってそれぞれの仕事に取り組んでおり、そのなかで、葭原さんは車いすに座り黙々と仕事をしていた。 葭原さんは21歳のときに交通事故で脊髄を損傷した。学校を卒業して希望の仕事に就き、社会人として順調なスタートを切ったばかりの事故だった。事故までは障害とは無縁の生活だったが、何が起きても引きずらない、何事も前向きに考える自分の性格から、事故後の自分を受け入れるショックや落ち込む時期は短かったそうだ。脊髄損傷の入院治療とリハビリテーションを終えると、自動車関係の事務職として再スタートした。しかし、その職場では残業しても手当がつかず、突然の職場内異動も重なり、藤井さん取材を終えて再び藤井さんと働く広場 2020.11デジタルコンテンツ企画制作部DTP組版担当係長の葭原勝男さんデジタルコンテンツ企画制作部部長の湯朝健二さん23

元のページ  ../index.html#25

このブックを見る