働く広場2020年11月号
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働く広場 2020.11で紹介したように、難病患者の就労困難性の大きな原因である「体調の崩れやすさ」は現在の身体障害認定基準に含まれていないため、就労支援ニーズのある難病患者の多くは障害者手帳制度の対象ではありません。また、読字障害や算数障害等のある人たちは、特定の職業では大きな就労困難性を経験する可能性がありますが、一般的な就労困難性は認められにくいという指摘があります。 フランスやドイツでは、わが国の障害者手帳制度に該当する障害種類・程度の人たちは、わが国と同様に医学的な認定基準により認定されますが、そのような認定方法では認定されない、より軽度の障害による就労困難性のある人を個別に認定して障害者雇用義務の対象とできる制度があります。そのポイントは、障害者本人の申請に基づき、具体的な就職活動や就業継続時の実際の困難状況や支援ニーズを職業リハビリテーションの専門職が支援の一環として確認するとともに、医学診断による疾病・変調・外傷・傷害等との因果関係を確認することです。具体的には、フランスでは多分野連携による総合的機関である「MDPH(県障害者センター)」の職業参入専門員と医師等による多分野専門家チームが審査に関わり「障害労働者認定」を行い、ドイツではわが国のハローワークと地域障害者職業センターをあわせたような「連邦雇用エージェンシー」が、現場の職業紹介や就業継続支援の担当者からの意見表明をふまえて「重度障害者と同等であることの認定」を行い、これによって障害者雇用義務の対象としています。 障害者の就労困難性は、身体的・精神的な機能障害だけによらず、実際に就く仕事内容、職場の環境整備や配慮の状況、地域での専門的支援の利用等によって大きく異なります。職業リハビリテーションは、この事実に立脚し、仕事とのマッチング支援や、職場での合理的配慮ノウハウの普及、ジョブコーチ支援や就職後の生活・医療面の継続的支援等により、従来は一般就業が困難とされてきた多くの障害者の就業可能性を広げてきました。 その一方で、わが国の障害者雇用率制度では、障害者の就労困難性を、障害者手帳やその等級等により確認しています。たしかに、障害者雇用義務の対象範囲や企業負担の調整に関わる障害重度を確認するためには簡便かつ一律な方法であることが重要であり、仕事内容や職場環境等が就労困難性に影響しない程度ならそれでよいでしょう。しかし、わが国では、障害者の就労困難性による障害認定や重度判定について、以前から、本稿で紹介するような課題が認識されてきたところです。 本稿では、わが国と同様に、障害者雇用率制度を有し、職業リハビリテーションや障害者差別禁止・合理的配慮提供義務においても近年発展を続けているフランスやドイツにおける就労困難性による障害認定や重度判定の課題への対応状況について簡単に紹介します。詳しくは、「調査研究報告書№154」(※1)をご覧ください。 わが国では、障害者手帳制度の対象ではないにもかかわらず、障害による就労困難性を有する人たちがおり、そのような人たちは職業リハビリテーションサービスや障害者差別禁止・合理的配慮提供義務の対象にはなりますが、障害者雇用義務(雇用率制度)の対象にはなりません。例えば本誌2018年10月号(28~29ページ)(※2)就労困難性による障害認定や重度判定〜フランスとドイツの取組障害者職業総合センター研究部門 社会的支援部門※1 「調査研究報告書№154」は、https://www.nivr.jeed.or.jp/research/report/houkoku/houkoku154.htmlよりダウンロードできます※2 当機構ホームページでご覧になれますnivr 調査 154検索﹁その他の障害者﹂の認定1働く広場 2018年10月号検索28

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