働く広場2020年11月号
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働く広場 2020.11――合同会社設立の2年後にはNPO法人を立ち上げたそうですね。 合同会社を立ち上げたときから、私と同じような難病患者のための働く場をつくりたいと考えていました。そこで支援活動を行いやすいNPO法人の設立を目ざしました。 事業は、インターネット上のショッピングサイト運営やWeb制作から始めました。2013年には就労継続支援A型事業として「パッショーネ工房」の前身となるECサイト(※1)を立ち上げ、オリジナルのモノづくりに力を入れるようにしました。本格的な草木染めや“こぎん刺し”(※2)の小物、折り紙を加工したアクセサリー、京都を舞台にしたアニメ作品とのコラボグッズなどを手がけています。 メンバーは20代から60代までの37人で、健常者2人を除く35人が難病・身体障害・精神障害のある方たちです。難病や障害が重複している方が11人、在宅勤務者は16人です。メンバーの疾病も20種近くと多岐にわたります。――難病患者の方が働くために、パッショーネで心がけていることは何ですか。 基本的には本人が「どれだけ主体的になって取り組めるかどうか」を考えています。やりたいことや将来像をヒアリングし、できるだけ具体的な仕事に結びつけていけるよう、最初の一歩をうながします。勤務時間や日数、働き方などは本人の状況に合わせてかなり自由に設定していますね。最近は、精神障害のある方が入社を希望してくるケースも少なくありません。働く場所も時間もフレキシブルな職場環境がマッチしているからなのでしょう。 5年ほど前からは、私が入会する京都中小企業家同友会のソーシャルインクリュージョン委員会の「求職困難者就労部会」が、地元の就労支援ネットワーク会議「いっぽねっと」や行政機関などと連携し、難病患者を含めたさまざまな境遇の人たちの就労支援を行っています。柱となる活動は、求職者と企業のマッチング。実習やトライアル雇用を実施しながら、雇用につなげていく取組みです。実際に雇用に至ったのは数人ですが、実習で自信をつけ、あらためて就活をして他企業に就職していく人たちは数多くいます。就労への後押しをするワンクッション的な機会になっていると実感しています。――難病患者の就労についての課題や展望についてお聞かせください。 国内の大局的な課題についていえば、やはり障害者手帳などを持てない難病患者を、少しでも障害者の法定雇用率に含めてほしいということになりますが、目下の課題は、一人ひとりが難病というハンデを超えるほどの能力を伸ばすことに尽きます。最初から「自分は難病だから」といって線を引いてしまうと、可能なチャンスも逃してしまいます。もちろん一般就労がすべてではありません。パッショーネではメンバーの副業もOKですし、個人事業主のように、事業所を活用して新しい取引先をつくったり、教室を開いたりして、スキルを仕事に結びつけてもらえたらいいなと思っています。今回のコロナ禍かは、あらためてパッショーネの運営方法や個々の就労のあり方を考える機会にもなりました。いろんな働き方で、その人らしい活躍ができるよう事業のすそ野を広げていきたいと考えています。 いま、国の指定難病は330疾病以上に増えました。企業のみなさんには、難病という言葉だけでひとくくりにせず、一人ひとりの状況や能力を見て、就労の間口を広げてほしいと思っています。世の中の理解もかなり進んできてはいますが、難病というぼやっとしたイメージで、それ以上聞くことを避けてしまう空気もあるようです。もっとフランクに話せるような社会になるといいなと思いますね。私たちも難病について少しでも知ってもらえるよう「難病カフェ」といったイベントや、漫画・動画配信などを積極的に行っていますので、ぜひパッショーネのホームページをのぞいてみてください。※1 ECサイト:electronic commerce(電子商取引)の略。インターネット上で商品を販売するWebサイトのこと※2 こぎん刺し:青森県津軽市に伝わる刺し子の技法の一つ。一般に青い麻布に白い木綿糸で刺すNPOパッショーネ検索地元企業などと連携もWeb制作やモノづくりフランクに話せる社会に3

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