働く広場2020年11月号
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働く広場 2020.11ろの補助金があったからこそ可能でした。その後は故障するたびに部品を調達したり、生産中止になったものは自分たちで代替部品を見つけて修理したりしながら延命させてきました」それにしてもミシンを操作しながら袋を動かす岩久さんの手際のよさには驚かされる。1日100~200枚分をこなすそうだ。岩久さんは「最初のころは縫い目の中心がずれるなどのミスもしましたが、いまはありません。ほかの人に作業を指導することもあります」と笑顔で話す。岩久さんは遺跡が大好きで、休日には地元の遺跡調査や見学会を手伝うボランティア活動にも参加しているという。三樹男さんが「ボランティアの現場は高齢の人が多いので、みんなに子どもや孫のようにかわいがってもらい、大事な戦力にもなっているようです」と教えてくれた。休憩中に三樹男さんに話しかけられていた、縫製補助担当の野の田だ貴たか洋ひろさん(43歳)は入社して19年。「ここは、いろんな仕事ができるので楽しい」と笑顔で答えてくれた。三樹男さんによると、野田さんは体格がよく力仕事も得意なうえに、職場外でも同僚がだれかにからまれているのを見つけると、すかさず間に入ってくれる兄貴的な存在だという。「従業員の間で仲間意識が強いのは、父の時代から、みんなで頻繁に社員旅行に行ったりマラソン大会に出たりして親睦を深めてきたからだと思います」と三樹男さんはふり返る。いまは会社が音頭をとらなくても、従業員同士で遊びにいくようになっているそうだ。 三樹男さんは2015年に社長になり、会長に退いた研二さんは2018年に93歳で他界されたが、経営理念とともに障害者雇用方針もしっかり受け継がれた。その柱となっているのが「障害者指導教育方針」だという。【障害者指導教育方針】●会社的教育 ①入社3カ月で自分の居場所づくり ②会社の仕事でなにができるか見極める ③工場のなかで仕事をする ④自分に合った指導者を決める●家庭的教育 ①自分のことは自分でできるようにする ②問題があれば家族と会社で話し合う●外的要因 ①職場の外に遊べる場所を提供 ②集まる場所のチェック ③お金の使い方のチェック ④社会的自立心を育てる障害者雇用においては、あえて、家庭や外での生活までふみ込んだ指導を目ざしている。そこには、研二さんや三樹男さんたちの「彼らを社会的に自立できるようにする」という確固たる理念がある。「特に、知的障害のある従業員たちのなかには、自覚なしに私生活が乱れてしまうだけでなく、家庭や第三者のトラブ状況に応じて「社員寮」も入社して1年の高嶋信明さん勤続23年のベテラン、岩久茂史さん縫製補助を担当する野田貴洋さん梱包作業を担当している渡辺悠希さんベルトの裁断をしている佐竹康則さん7

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