働く広場2020年12月号
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働く広場 2020.12工場に出向き、実際のキッチンの天板の高さや動線を含めた使い勝手を確認した。「実際にウェルライフが完成したときは、やっぱりうれしかったですね」とふり返る。その後、東京ビッグサイトで開催された国際福祉機器展においてリクシルがウェルライフを展示したときには、野村さんも会場に出向き、説明員を務めた。リクシルが今年9月に商品化した、一般住宅の玄関ドアを自動化する電動オープナーシステム「DドアックOAC」の開発にも、野村さんがモニター役として参加したそうだ。「日ごろNIJI内だけで仕事をしているので、たまにほかの部署の方たちと一緒に仕事ができると、よい経験、よい刺激になります」野村さんは、NIJIではパソコンの入力作業を担当している。職場では、デスクまわりの通路を広めにし、低い位置にあるキャビネットを専用で使用するなどの配慮をしてもらっているほか、電車通勤のため、ラッシュ時間をずらした午前10時出社となっている。 業務内容やメンバー本人の能力によって、NIJIではなく業務依頼元のオフィスで仕事をするケースも増えている。その場合は、あらかじめNIJIのリーダーが受入れ先の部署に出向き、本人の特性や配慮事項についての説明会を行っている。いまは聴覚障害のある9人と精神障害のある3人が本社オフィス業務、知的障害のある4人のうち2人が社員食堂で厨房とホール業務、もう2人が清掃業務に就いている。リクシルは2018年3月に「LIXIL ダイバーシティ&インクルージョン宣言」を発表し、「多様性を認めるだけでなく、あらゆる個性を成長とイノベーションの原動力にすることを目的に、国や地域ごとの課題に合った活動を展開する」としている。インクルーシブな職場の実現の一つの形として、NIJIのメンバーが依頼元の部署に「異動」することも大きな目標ではある。ただ到達点やペース、タイミングなどは一律とせず、あくまで一人ひとりの特性に合わせてキャリアパスを進めていくようにしているという。「さらにNIJI自体の戦力化や存在価値の向上にむけ、業務を通じた社内交流も図っています」と富井さんは話す。例えば、本社内の社員が自由に業務を行う交流エリアの備品管理などをNIJIが担当したり、ショールームに勤務する社員向けの手話教室を開催したりしている。手話教室では、聴覚障害のある来訪者との基本的な意思疎通や、災害などの非常時に避難をうながすための手話を教えているという。最後に、今後のNIJIの運営方針について富井さんが語ってくれた。「NIJI自体も物理的なキャパシティが限界に来ているので、本社内に出張するような形も含めて、勤務場所を増やしていきたいですね。将来的には、全国のほかの拠点にも同様の機能を持たせた場所をつくっていけたらと考えています」職場におけるダイバーシティ&インクルージョンを実現していく拠点の一つとして、さらなるNIJIの活動展開が期待されている。NIJI以外の職場でも勤務パソコンの入力作業や書類のPDF化などを担当する野村絵梨さん野村さん(左)は、国際福祉機器展で開発に協力した商品の説明を行った(写真提供:株式会社LIXIL)9

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