働く広場2020年12月号
26/36

~販売・出荷の一連の流通経路を一体化して運営する「道の駅のような場所(仕組み)」を提案しています。企業がこのような場所の経営に乗り出せば、このそれぞれの部署の特性に応じた多様な障害のある人を雇用することができるでしょう。石崎 障害のある人を雇用している企業が復調するには、社会全体の経済活動の動向をふまえても、少なくとも3年くらいはかかるでしょう。そのためには、親会社や業務受託先が協働して、技術革新の成果を取り込みながら新たな仕事を生み出すことが必要です。これまでも、知的障害のある人にはむずかしいと思われていた仕事(例えば、名刺などの印刷)も、技術革新により、いまでは多くの障害者雇用企業で行われています。AIの展開によって特例子会社の仕事は消失するのではといわれていたのですが、結果的には、新たな技術を取り込んで仕事を増大してきた経緯があります。 先ほどの農福連携でも、農業の暗黙知を技術的に“見える化”して、それをAIに組み込むことで新たな事業が展開できるかもしれません。こうした将来展望を考えると、今後は、いかにテクノロジーを使って事業展開を進めるかを考える時期にあると考えています。 また、そうした成果や情報は、企業間仕事では、テレワークは通用するのですが、知的障害のある人の多くが従事している作業系の仕事は、テレワークの適用には向きません。  石崎 現在は、社会構造自体が一種の調整期間に入っており、社会全体の経済活動の回復には数年かかると思います。明るい展望はなかなか開けないのですが、新規事業の展開はますます必要となるでしょう。特に、テレワーク関連の事業を広く開拓していくことが求められています。 とはいうものの、障害のある現有社員の能力などを考えると、現実的にはむずかしい面もあります。特に、知的障害のある人たちの現業仕事の減少にどう対応するかが大きな課題です。なかには、工場の製造工程ラインに組み込めるかを検討しているところもあります。当面の可能性はあると思いますが、製造工程のロボット化の流れのなかにあっては将来的にも有望な仕事となるか不安な部分があります。畠山 最近の流行として、農福連携が新たな事業として脚光を浴びているようです。ですが、これまでの方法では、障害のある人の雇用拡大になかなか結びつかないのではと思います。そこで生産~加工結果を見るかぎりは、想像していたよりも現場は混乱しているようには感じられません。さまざまな手段を模索しながら、現実的に対応していることが読み取れました。 特に、在職者については可能なかぎり雇用の維持に努力しているのですが、他方で、新規採用に手控えの傾向がありました。また、在宅就業を進めたいが仕事の提供に苦慮しており、実際には在宅という名の自宅待機が少なからず行われていることが印象的でした。 調査対象の企業はおもに特例子会社であることから、本社の在宅就業による出社率が回復してこないかぎりは特例子会社も成り立っていかなくなります。また、おもに知的障害のある人が配属される集団的作業の縮小が予想されるなかで、新たな仕事をどのようにしてつくり出していくかが今後の大きな問題となります。畠山 障害者雇用を考える場合、病気や障害によって従事できる仕事に違いがあります。また、テレワークと在宅勤務の違いについて混乱しないことが大切です。テレワークは仕事そのものですが、在宅勤務には自己学習も含めた自宅待機も含まれます。発達・精神障害のある人に比較的多いパソコンによる事務系の今後の見通し(2)働く広場 2020.12障害者雇用企業支援協会理事長の畠山千蔭さん常務理事の石崎雅人さん24

元のページ  ../index.html#26

このブックを見る