働く広場2020年12月号
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き方も変わらざるを得ません。具体的には、「働く場所」と「働き方」を見直す必要が生じてきます。働く場所の見直しは必然的に、業務、人材、管理、評価のあり方について再考することが必要になってきます。 このように、障害者雇用においてもテレワーク・在宅勤務をどのように実現して継続するかが重要になることは間違いないでしょう。他方で、こうした就業形態にそぐわない現業部門の仕事の減少とそれに従事する障害者の処遇に、どのように取り組んで行くかが今後の課題となります。また、こうしたことの全体を通して、企業が障害者雇用に取り組む意味や意義を見つめなおす機会になるかもしれません。 本稿を執筆している9月時点では、複数のメディアがコロナの影響に関する報道をしていますが、障害者雇用の求人についても「“コロナが~”という短期的な話ではなく、中長期的に“業績が悪くて追加採用の見通しが立たない”」という話が増えてきています。 そのため、企業だけではなく、国や地方自治体など行政や支援機関も一体となった支援体制がますます必要になることでしょう。企業、そして障害者一人ひとりが選択肢を持って働けるための質の高い支援が求められます。 調査やヒアリングを通して、いくつかの点について検討してみました。 このコロナ禍が収束するまでは、障害者雇用は厳しい状況が続きそうです。特に、就職活動では、合同企業説明会の縮小や中止で、障害者と企業が出会う機会が大きく減っています。また、職場実習も、在宅勤務の浸透で企業の受入れ体制ができていなかったり、外部の人の構内入所の禁止などが生じていたりしています。企業も障害者雇用を進めるうえで重要な、採用方法について模索しています。 一方で、オンライン教育、インターネット販売、作業の機械化サービスなど、新たなサービスチャンスが発生する可能性もあります。例えば、ウェブを活用した採用方法の導入で、コミュニケーションに苦手意識や不安を抱く障害のある学生は企業にアクセスしやすくなり、新たなチャンスが生まれるかもしれません。また、それにともなって、採用基準の見直しによる新たな人材が発掘されるかもしれません。さらに、通勤の不安などに課題のある障害のある人には、むしろ働きやすい職場となるかもしれません。 こうした状況のなかでは、私たちの働で共有して拡大・浸透を図ることが必要でしょう。そのことによって、地域や世の中の全体が変わっていくことを期待したいです。畠山 他方で、企業のこうした新たな事業へのチャレンジに対して、社員はそれに応え得る能力が必要です。そのためには、事業所の人材育成に留まらず、企業に人材を送り出す医療・保健・福祉・教育の分野において、さらなる教育訓練が必要であることを意味します。 受け入れ側の事業所は、IT化や在宅就業を推進していくにつれて、障害のある社員であっても、いままで以上に高度な能力を求めていくでしょう。それに対応して、送り出す側のさらなる人材育成が求められます。企業側の受け入れ水準をもっと下げてほしいという要求は、現実的ではありません。 企業は利益を出し、かつ、労働者の生活を担保する使命があります。そのため、企業が障害者の雇用を維持できる社会的な仕組みを構築していくことが必要でしょう。石崎 企業は、法定雇用率の達成と維持について、背伸びしながらもがんばっています。今回の調査の感想としても、そうした状況をふまえた障害者雇用の仕組みを考えていくことが求められていると思います。3.まとめ働く広場 2020.1225

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