働く広場2020年12月号
31/36

働く広場 2020.12答を求めました。ここでは「自閉症スペクトラム障害の行動特徴」の結果をご紹介します。 ①発達障害者(Ⅰ群)と精神障害者(Ⅱ群)の 特性比較  Ⅰ群はⅡ群に比して、項目全般で“特異さがある”“特異さがややある”と判断された者が、より多いという結果でした。Ⅰ群は発達障害の下と衝突・不和」などが、高頻度で挙げられていました。職場での役割がはっきりしないことや、職場内のタテ・ヨコの関係は、Ⅱ群の人たちにとってストレスの原因になりやすいようです。  Ⅱ群の多くは、発達障害の傾向はあっても専門的な診断や判断がないため、職場の関係者のみならず、本人ですらその事実に気づいていない可能性があります。場合によっては、発達障害の傾向を考慮した配慮や対処が必要であっても、本人の性格や努力不足の問題ととらえられてしまう恐れもあります。発達障害の傾向がある社員がメンタルヘルス不全や適応の問題を示した場合、社内だけでなく、専門家を含めて検討することが重要です。必要に応じて産業保健窓口や医療機関、職業リハビリテーションなどの専門的支援機関との情報交換や連携をすることが求められます。  ヒアリング調査では、地域センターの支援を通じて、企業と本人の間で発達障害の傾向が共有され対処を行ったことで、問題の深刻化を防いだケースが報告されました。    調査研究報告書№150では、アンケート調査のほかに、発達障害と精神障害が併存する事例についてヒアリング調査を行い、支援に重要な視点を整理しました。また、具体例を紹介したリーフレット「発達障害特性と精神障害が併存する人の就労支援のポイント」も作成しました。これらの資料は障害者職業総合センター研究部門のホームページ(※)からご覧いただけます。 診断があるので特異さが観察されることは当然といえます。一方のⅡ群は、診断がないにも関わらず、Ⅰ群ほどではないにしろ、相当程度の人数が“特異さがある”、“特異さがややある”と判断されていました。またⅠ群とⅡ群ともに『他者との関係づくり』、『対人的交流の相互作用の障害』の結果に同様の傾向が見られました。  加えて、Ⅰ群とⅡ群は共通して「社会性・コミュニケーション(図1)」において、「こだわり(図2)」のカテゴリより“特異さがある”が高頻度で生じており、Ⅰ群とⅡ群の職場適応の課題の背景となる特性は、共通している可能性が示唆されました。 ②精神障害者Ⅱ群の職場でのストレス要因の特徴  さらに、職場不適応の背景となりうるさまざまな職場ストレス要因を列挙したうえで、実際の支援事例にそれらがストレスの原因となったかどうかの回答を求めました。調査結果を3群間(Ⅰ群、Ⅱ群、Ⅲ群)で比較したところ、Ⅱ群では、「役割不明瞭」や「上司や部◇お問合せ先:研究企画部 企画調整室(TEL:043-297-9067 E-mail:kikakubu@jeed.or.jp)おわりに4図1発達障害者と精神障害者における発達障害関連特性(社会性・コミュニケーション)に関する所見図2 発達障害者と精神障害者における発達障害関連特性(こだわり)に関する所見習慣・言語・非言語的行動の儀式的パターンへの過度なこだわり╱変化への過度の抵抗0%0%20%20%40%40%60%60%80%80%100%100%対人的交流の相互作用の障害Ⅰ群Ⅱ群Ⅰ群Ⅱ群Ⅰ群Ⅱ群Ⅰ群Ⅱ群Ⅰ群(発達障害者 n=105)、Ⅱ群(精神障害者 n=79)Ⅰ群(発達障害者 n=105)、Ⅱ群(精神障害者 n=79)Ⅰ群Ⅱ群Ⅰ群Ⅱ群特異さがある特異さがある特異さがややある特異さがややある平均的平均的不明・無回答不明・無回答他者との関係づくり非言語的コミュニケーションの障害常同的・反復的な言語、運動、物の使用限局的で固着した興味56.2%6.7%20.3%1.3%1.3%31.4%15.2%11.4%8.9%41.9%11.4%22.8%7.6%57.0%29.1%19.0%51.9%1.3%11.4%44.8%30.5%12.4%49.5%1.0%8.6%41.8%31.6%36.7%53.2%10.1%6.3%53.2%10.1%48.6%39.0%21.5%79.7%16.2%41.9%5.1%8.9%3.8%3.8%26.7%14.3%15.2%72.4%1.9%6.7%29

元のページ  ../index.html#31

このブックを見る