働く広場2021年1月号
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 東京都教育委員会では、2008年度より特別支援教育推進室を開設し、卒業後の就職先となる企業の開拓に力を入れてきた。翌2009年度には、「就労支援アドバイザー制度」を開始し、障害者雇用の経験がある企業などからの外部講師を配置し、特別支援学校の授業改善および進路指導の充実に取り組んできた。また、新たに開校した専門学科では職業教育の質を高めるため、特別専門講師を雇用し、教員とともに授業改善を行っている。 志村学園の高等部就業技術科では、流通・サービス系列として「流通・都市農園芸サービスコース」と「ビルメンテナンスコース」があり、家政・福祉系列として「食品加工コース」と「介護・コミュニケーションコース」を設置している。これらの4コースに、6人の特別専門講師(流通・都市農園芸サービスコースには流通で1人、ビルメンテナンスコースには清掃で1人、食品加工コースには接客と厨房で2人、介護・コミュニケーションコースには介護とホテル客室で2人)が配属されており、教員とともに専門性の高い授業を目ざしている。 最初に訪問したのは、「流通・都市農園芸サービスコース」の3年生の授業。流通加工の授業内容で、スーパーなどの店日差しを取りこむ明るいデザインで、就業技術科の生徒による清掃が行き届いているため、いまでも開校したてのような清新さを感じる。また、屋上からの眺めには開放感があり、都内のビル群の様子が見える。屋上緑化と窓の清掃も高等部就業技術科の生徒が中心となって行っているそうである。 また、肢体不自由教育部門の児童・生徒の通学のために、スクールバス14台と、医療的ケアを必要とする児童・生徒のための専用車両2台が運行しているが、高等部就業技術科の生徒は、全員が電車とバスを利用して通学をしている。障害種別を超えた部門併置は、児童・生徒および保護者、教職員にとって、日常生活のなかで多様性を理解し、お互いを大切に思う環境となっているように思われる。 訪問すると、副校長先生をはじめ先生方が迎えてくださった。校舎内の廊下や教室は新型コロナウイルス感染防止対策のため部門ごとにコーンやテープで区分けされており、児童・生徒および教職員の部門を越えた濃厚接触が起こらないよう配慮されている。諏す訪わ肇はじめ校長、阿あ出で川がわ千ち賀か子こ副校長(高等部就業技術科)、深ふか井い敏とし行ゆき副校長(肢体不自由教育部門高等部)、二に階かい堂どう美み保ほ副校長(肢体不自由教育部門小学部・中学部)、久ひさ田だ美み由ゆ紀き進路指導主任の先生方から、学校概要の説明を受けたあと、授業の見学について打合せを行い、案内していただいた。 「東京都立志村学園」は、2013(平成25)年4月に開校し、8年目を迎える。肢体不自由教育部門の小学部、中学部、高等部(全児童・生徒数98人)とともに、知的障害教育部門の専門学科である高等部就業技術科(1学年定員80人)を併置する学校である。東京都では2007年度より、知的障害教育における大規模な専門学科を順次設置し、現在都内には就業技術科が5校ある。また、小規模の専門学科(1学年定員20人)が3校設置されている。2021(令和3)年春には、中規模の専門学科(1学年定員40人)が開校する予定である。 志村学園は板橋区の高台にあり、高等学校の跡地に新設された特別支援学校である。校舎は自然の部門併置のよさと多様性専門家との協同の授業で顧客意識・品質意識を学ぶ働く広場 2021.1東京都立志村学園諏訪校長先生をはじめ、就業技術科や肢体不自由教育部門の先生方にお話をうかがった外部講師とともに専門性を学ぶ体験学習で社会を学び、自分を知る在学中からの連携と育成の視点が定着を生む123POINT21

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