働く広場2021年1月号
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舗で使われる商品のトレイをラッピングの機械を用いて包装する学習であった。この日の授業は特別専門講師の小お野の博ひろ也やさん(元大手スーパー特例子会社の取締役)を中心に行われており、商品を置く位置、ラップを張るコツ、商品を持ち上げて手前の電熱器カッターで切断し、最後にトレイの底面を圧着する、というポイントを見せてから、生徒一人ひとりに体験させていた。ここで注目したのは、作業スキルよりも、小野さんの穏やかなコミュニケーションのもと、ラッピングの良し悪しに気づかせ、考えさせる場面をつくっていることであった。生徒たちはお客さまの視点からきれいなラッピングの商品を買いたいと思い、そのためにはどうすればうまくできるかに注目するようになる。ここに顧客意識が生まれ、作業への品質意識が高まってくる。「もう一回」と要求する生徒たちの姿に自ら学ぶ意欲を感じた。一人ひとりを知っている教員が、そばで再度アドバイスする。仕事の専門家と生徒をよく知っている教員の協同が、専門性の高い授業を生む。 「介護・コミュニケーションコース」の3年生の授業では、筑波大学とサイバーダイン株式会社(茨城県)の共同研究で開発された「介護アシストスーツ」を用いた学習が行われていた。アシストスーツは神経の電気信号を感知し、人の動作を補助するもので、介護用のほか肢体不自由者の歩行アシストなどにも使えないか試行されているそうである。生徒は一人ひとりスーツを装着し、約20㎏の荷物を上げ下ろしして運ぶ体験をしていた。ここでも動作やスキルそのものよりも、介護の最先端技術を知り、どのように安全に物を運ぶのか、労働安全衛生にもつながる内容を体験し、学んでいた。生徒も教員も新鮮な驚きと学ぶ楽しさを共有している姿が印象的であった。 「食品加工コース」の授業では、3年生がお客さま役と接客担当に分かれて学ぶ様子を見学できた。以前にレストランを経営している企業の方から、「料理に加え接客がよくないと、後味の悪いお店になってしまう」と聞いたことを思い出しつつ、生徒が自ら考え工夫や改善をする力を引き出そうとする授業に感心した。また、志村学園では地域住民も自由に利用できるカフェ&レストランを運営しており、厨房ではフランス料理の特別専門講師が教えているそうである。2020年度は新型コロナウイルス感染防止のため事前予約制にし、時間帯をずらして利用してもらうなどの配慮をしていた。現在、カフェ&レストランは営業を見合わせているが、まもなく再開する予定だという。 「ビルメンテナンスコース」の授業は、時間の都合で残念ながら一部しか見学できなかったが、用具室では清掃資機材が整理整頓されており、モップやタオルなどの洗濯・消毒が行われ、衛生的に管理されていることがよく理解できた。感染防止対策のための除菌清掃も2020年度から行うようになった。 また、各コースとも近隣の企業の協力を得て、物流倉庫やスーパー、高齢者のデイサービスや有料老人ホームなどで実習を行っている。2020年度は老人ホームの利用者のみなさんとオンラインレクリエーションを試みているとのことである。 高等部就業技術科の授業の最後は、「事務・情報処理の学習」と「職業」の進路学習の授業であった。「事務・情報処理の学習」は就業技術科全コースの生徒が学ぶようになっており、データ入力や文書作成に加え、スキャナーによるPDF化作業、学校のホームページのブログの更新なども学んでいるそうである。受注による印刷製本も学習している。また、部活動の科学・パソコン部では、プログラミングを学ぶ。「職業」の授業では、3年生がこれからの採用選考について学んでおり、求人票から応募、学校推薦を受けて採用選考という道筋を復習しながら、いまの自分がどこの位置にいるのかを確認していた。2020年度は新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあり、採用選考開始が、例年より1カ月遅れの10月16日になったことも生徒には身近な話題となっていた。 また、肢体不自由教育部門高等部の授業では、特別支援学校で行われる「自立活動」の授業を見学できた。上下肢訓練室で、一人ひとりの身体に応じたていね働く広場 2021.1介護アシストスーツを装着し、荷物の上げ下ろしを体験する生徒(中央)生徒に手本を見せる特別専門講師の小野博也さん22

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