働く広場2021年1月号
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年、特別支援学校や就労支援機関などでの事務分野での職業訓練が進み、オフィスでの職域に広がりがみられるため、「オフィス業務」では、「印刷業務チーム」、「生産管理・受発注チーム」、「文具管理チーム」、「メール室」などのチームに分かれている。 また、パソナハートフルは東京駅そばの大手町にあるが、パソナグループの拠点が新丸の内ビルディングにもあるため、パソナハートフルの社員は大手町と丸の内に分かれて勤務している。 パソナハートフルの特徴は、設立当初より特別支援学校との連携により、障害の特性を個性や強みとしてとらえ、リフレーミング(※2)をすることで社内の環境を整えて雇用をしてきたことである。現在では、管理統括部の社員が東京都教育委員会から「就労支援アドバイザー」を委嘱され、都内特別支援学校でビジネスマナー講座の授業や授業改善の助言などを行いながら、学校との連携をより深めている。さらには雇用した卒業生をメンターとして、出身校の授業などに派遣している点も優れた実践である。 取材当日は大手町にある管理統括部を訪ね、副社長の白しろ岩いわ忠ただ道みちさんと管理統括部の加か藤とう美み侑ゆうさん、青あお木き実み乃の里りさんから会社概要についての説明をお聞きした。その後に、志村学園の卒業生が多く働いていることから、2019年度まで同校の進路指導主任をしていた小お澤ざわ信のぶ幸ゆき先生に材派遣のリーディングカンパニーである「株式会社パソナグループ」(東京都)の特例子会社である。親会社であるパソナグループは人材派遣企業であり、雇用している派遣スタッフは派遣先企業で働くが、同社の常用雇用労働者数に含まれるため、多くの障害者の雇用が必要となる。1992年に障害者のアート分野における才能の発掘・育成や職域の拡大を目的に「アート村プロジェクト」を発足し、2003年にパソナハートフルを設立した。 同社は「才能に障害はない」というコンセプトのもと、障害のある人のそれぞれの強みに着目し、特別支援学校と連携しながら、採用を進めてきた。障害のある人が学校で学び、得意とする作業や才能を活かし、絵画制作に従事する「アート村」、縫製などによる手作り商品の企画・製作を行う「アート村工房」(全国4カ所)と「アート村ショップ」(全国3カ所)、農業による新たな就労の場を提供する「ゆめファーム」(全国3カ所、運営受託管理1カ所を含む)、無添加のパン・クッキー・パウンドケーキを製造販売する「パン工房」(全国3カ所)、パソナグループ各社から印刷製本、郵便物の受発送、パソコンによる社内文書作成などの業務を請け負う「オフィス業務」を行っている。 障害のある従業員数は、281人(身体障害59人、知的障害158人、精神障害64人・2020年10月現在)である。近いな機能訓練が行われていた。また、高等部生徒は、自らの「進路新聞」をパソコンで作成しており、「一人で料理をしてみたい」、「スポーツを続けたい」などの将来の夢を新聞にしていた。近年、障害のある人の情報リテラシーが課題となっていることから、これらの情報やパソコンの授業がすべての生徒に行われていることは、長い成人期における将来の能力開発の土台となると思われる。 見学を終えて、最後に校長先生、副校長先生と話し合った。「どの授業でも、生徒と先生方との穏やかなコミュニケーションが見られ、学校全体が優しい雰囲気である」という感想を述べたところ、学校経営方針として「主障害はもとより、発達障害やメンタル系の障害、愛着障害など児童・生徒一人ひとりの障害特性をふまえた指導を充実させる」、「児童・生徒から相談されやすい雰囲気を醸成するとともに、教職員の相談技術向上に取り組む」ことを大事にしているとお聞きした。ここには、近年注目され始めたWHO(世界保健機関)が掲げる「ライフスキル」(※1)の教育と学びが意識されており、児童生徒が自己のよさに気づき、自己理解を深める環境を整えていることがうかがえた。 「株式会社パソナハートフル」は、人一人ひとりの才能を活かした障害者雇用を目ざして働く広場 2021.1パソナハートフルの障害者雇用の取組みについて説明する副社長の白岩忠道さん(左から3人目)発注書の確認作業を行う石綿洵哉さん※1: ライフスキル: 日常に起こるさまざまな問題や要求に対して、より建設的かつ効果的に対処するためのスキルと位置づけられ、WHOが1994年に、各国の学校の教育課程にその修得を導入することを提案した※2:リフレーミング:ものごとを見る枠組み(フレーム)を外し、違う枠組みで見直し新たな視点を持たせること23

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