働く広場2021年1月号
27/36

用紙の補充・在庫管理などのほか、書類のシュレッダーおよびごみの分別などの作業を行っている。 公務部門における採用は、民間企業と異なり、就労支援にかかわる制度やサービスが限定的となるむずかしさがある。そこで、外部から障害者指導員や職場定着アドバイザーなどの人材を採用することが有効となる。 経済産業省本省でも新規学卒の2人を採用している。在学中からの相互訪問や就業体験で、職場の理解促進と安心して働く環境を一緒に整えられる特別支援学校は、就労支援機関でもある。今回の雇用事例が今後、多くの公務部門における好事例となることを願っている。 新型コロナウイルスの感染防止により、障害者雇用のあり方にも変化が見られ始めている。今回の取材を通して、こうした状況をネガティブにとらえるのではなく、むしろ新たな課題解決に向けて、新しい障害者雇用のあり方や障害のある当事者およびその雇用支援をする関係者の新たな学びを構築する機会としてとらえ直すことが求められているように思う。それぞれの取材先のみなさまには、むずかしい状況のなか快く取材を受けていただき、ご協力いただいたことに重ねて感謝申し上げたい。経済産業研修所でもご苦労が多いそうである。 加藤さんについても採用当初は、週3日ほどはパソコンとスカイプによるテレワーク、週2日ほどは出勤しての作業とした。また、テレワークに向けては前日に課題を出すなどの配慮をして取り組んでもらった。テレワークをするためには、メールが必要であり、そのスキルとともに情報管理の重要性についての理解も必要となることから、日報やファイルについてもていねいに説明したそうである。 こうした配慮を加藤さんに合わせてできたのは、障害者指導員の廣島さんを雇用したことが大きい。廣島さんを通して、事務室の直属の上司や責任者である課長の中尾さんとの情報共有ができ、加藤さんへの周囲の理解が深まったと考えられる。出勤時はウォームアップの時間を取り、体調管理をするための報告機会を設けており、きめ細かな配慮をしている。事務室の加藤さんのデスクにはパーテーションが設置され、業務に集中できるように配慮されていた。 現在の業務は、午前中は会議室や講師控室などの清掃と消毒作業を行っている。また、約190室ある宿泊棟に関しては、ベッドとシーツや室内に置かれている扇風機、LANケーブルの清掃と消毒を行っている。椅子などは専用の機器を購入し、スチーム消毒をするようになった。清掃後は事務室内にあるコピー機の経済産業省大臣官房秘書課課長補佐の松まつ村むら栄えい作さくさん、同じく大臣官房秘書課の障害者職場定着アドバイザーの市いち村むらたづ子さんであった。 すでに各省庁およびその関係機関では、障害者雇用が進められており、経済産業省と経済産業研修所でも障害者が雇用されている。なかでも、今回の経済産業省の採用は、高卒求人での特別支援学校からの雇用が特徴的である。いままでの取材でも述べてきたように、障害のある人のなかには就業体験があることで働くことへの理解が深まり、雇用関係を結ぶという双方にとって有効な機会となる場合も多い。2020年度に同研修所で採用された加か藤とう颯そう真まさん(志村学園5期生)も同様に就業体験を経て就職した。会計年度任用非常勤職員としての採用であるが、これから長く働く若い世代の人たちにとっては、キャリアアップの機会として考えられる。 民間企業も同様であるが、公務部門における採用後の研修は、職制上も社会の変化に対応するうえでも重要な役割を持つ。国民へのサービスの質を担保するために必要だからである。2020年度は新型コロナウイルス感染防止の新しい生活様式が求められるなかで、オンライン方式になった研修も多い。宿泊をともなわず参加しやすい半面、情報量の制約や個のネットワークをつくりにくいなど、課題も見えてきているのではないだろうか。おわりに働く広場 2021.1猪熊祐希さんは、大手町のパソナ本部ビル「JOB HUB SQUARE」のショップで働く動画とリストの照合作業にあたる山本一真さん経済産業研修所経済産業省での障害者雇用についてお話をうかがうコピー機に用紙を補充する加藤颯真さん25

元のページ  ../index.html#27

このブックを見る