働く広場2021年1月号
31/36

働く広場 2021.1の活用を基本としています。ア 導入 対象者と個別相談のテーマを共有し、SOCCSS法という枠組みを用いて相談を進めていくことを説明します。イ 問題の明確化(状況の把握) 自然な会話の流れを意識しながら問題に関する情報(誰が、何を、いつ、どこで、なぜ)を確認します。ウ ブレインストーミング(選択肢) 明確化した問題に対して選択肢を出す段階です。集団場面とは違い他者の意見を参考にできないため、選択肢が出にくい場合は、対象者が過去に実際に行った方法を聞いて解決策のヒントにしたり、支援者が選択肢を提案するなどの工夫が必要です。エ 解決策の決定① 結果予測・選択判断 選択肢を実行した場合、どのような結果になるかを予測し、効果と現実性の観点から順位をつけて実際に取り組む選択肢を選ぶ段階です。対象者の状況に応じて結果の予測や選択肢の評価について支援者の見解を伝えます。② 段取り:行動プラン 選んだ選択肢を実行する計画を立てる段階です。フローチャート形式で作成するなど計画の流れや方法をわかりやすくする工夫を入れます。③ 事前試行の方法 考えた段取りに対して、さまざまな方法を用いて事前に試してもらう段階です。を実行する前に頭の中でシミュレーションすることで、実行上の注意点や効果が出にくい状況を事前に把握することができ、よりよい解決策の発見へとつながりました。イ 自閉症スペクトラム障害のある方への適用 選択肢は独力で出せるものの結果予測や選択肢を継続的に実行できそうか否かについてはイメージしにくかったり、具体的な段取りが考えられていませんでした。そこで、結果予測や段取りのステップにおいて支援者が質問や助言を行ったり、事前試行のステップにおいて自宅でのシミュレーションと家族への相談を行うことで、スムーズな解決策の実行と問題解決が実現しました。また、相談を通じて、「選択肢を選んだ結果をイメージしにくい→思いついた選択肢を次々に試す→うまくいかない状況が続く」という自身の問題解決行動パターンに気づくことができました。 問題解決の取組みは必ずしも一回で成功するとはかぎりません。しかし、戦略的な枠組みに沿って試行錯誤を重ねることで解決に近づけるという体験は、失敗に対する落ち込みや恐れの軽減にもつながると期待されます。本実践報告書が、就労支援の充実ひいては支援対象者の粘り強い問題解決の取組みにつながれば幸いです。 実践報告書№34「問題解決技能トレーニングの改良」は、障害者職業総合センター(NIVR)のホームページに掲載しています(※1)。また、冊子の配付を希望される場合は、下記にご連絡ください(※2)。④ 事前試行からの検討事項 事前試行の結果、気づいたことやわかったことを確認します。選択肢や段取りを修正・変更する必要があるか、別のよりよい方法があるかなどを検討します。オ 実際の施行結果・その後の経過 選択肢の実行結果を確認します。問題が解決した場合はここで終了となり、解決しなかった場合は、問題の明確化の段階に戻ります。ア 対象者の納得性・自発性の促し方選択肢や段取りを考える過程で、対象者の出した意見を取り入れることが納得性や自発性の向上につながります。イ 選択肢を出せない対象者への対応 基本的に支援者が選択肢を提案する形になりますが、対象者の障害特性や知識、経験などをふまえた実現可能性の高い選択肢を提案することが重要です。ウ 解決策案を実行できない対象者への対応 段取りを細分化する、解決策の難易度を下げる、実行できないことをテーマにSOCCSS法を実施するなどの方法があります。ア 注意欠如・多動性障害のある方への適用 思いついた選択肢をすぐに実行したい、すべての選択肢を実行したいという反応に対し、選択肢の効果と現実性を検討することで客観的に選択肢を選ぶことができました。また、選択肢※1 「実践報告書No.34」は、https://www.nivr.jeed.go.jp/center/report/practice34.html よりダウンロードできます※2 障害者職業総合センター職業センター TEL:043-297-9043 https://www.nivr.jeed.go.jp/center/index.html検索nivr 実践 34【実施方法の概要】【事例の概要と支援効果】【最後に】【個別相談でSOCCSS法を 活用する際のポイント】29

元のページ  ../index.html#31

このブックを見る