働く広場2021年1月号
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はトヨタのSDGsの定義として章男社長が掲げている「YOUの視点」でもあります。「自分以外のだれかの幸せを願って何かをやる」というYOUの視点を持って行動できる人材を増やしていくことが、社会の役に立ち、企業の競争力にもなり、新しいビジネスを生んでいく力にもなると考えています。 最近では、合かっぱ羽メーカーとの連携が印象深いですね。その会社は、コロナ禍かで医療現場を助けたいという思いから、新たに防護ガウンの生産を始めましたが、政府の要望に生産が追いつかず、新聞広告で協業を呼びかけていました。それを見つけたある社員が生産調査部に相談、社員たちが社会貢献活動として出向きました。ガウンと自動車でモノは違えど同じ〝モノづくり工程〞、現場で一緒に改善を図ったところ、協力会社も巻き込んで生産量を100倍にも増やすことができました。同時に生産調査部の社員たちも「あらためてトヨタ生産方式を見直す機会になった」とふり返っていました。私も「こんな形の社会貢献もあるのだな」とうれしくなりましたね。――トヨタの障がい者雇用やダイバーシティ推進は、どのように進んでいくのでしょうか。大塚 私たちは、障がいの有無にかかわらず囲のさまざまな立場の人から意見を聞き、その影響を受けながら意思決定をしている」と話しています。さまざまな境遇にいる人のことを知って学び、自分たちも変わって成長するような企業風土をつくることが大切なのだと思います。トヨタは大きな組織なので、進めにくいこともあるかもしれませんが、「自分のチームメンバーは幸せかどうか」を軸にすることができれば、自然とダイバーシティも進んでいくでしょう。そして社員全員が、ひとりの人として「自分以外のだれかのために」、「世の中をよくするために」という姿勢で仕事に向き合うことが、トヨタのSDGsである〝幸せの量産〞につながっていくはずです。こうした企業風土の醸成に向け、全社で引き続き取り組んでいきます。ともに働きともに生きる「共生社会」の実現のためにも、障がいのある社員とそうでない社員の接点をもっと増やしていきたいと考えています。すでに福祉車両やロボットの開発には障がいのある社員が積極的にたずさわったり、ループスの社員も参加しています。また社内で開催している「心のバリアフリー」研修では当事者のループス社員が講師をしてくれています。障がいの有無にかかわらず人はそれぞれ得手不得手や考え方や背景に違いがあって、お互いにそれを認め、活かし、補いながらともに働く、そういう職場をつくりあげていきたいです。 さらに今後はトヨタ本体で、事務系職場でも障がいのある社員を積極的に採用していきたいと考えています。みんなが一緒に働いていくためには、企業側で変えるべき部分も少なくないと思っています。例えば今回のコロナ禍も、社内の基本的な働き方が変わる大きなきっかけになりました。トヨタ社内では〝現地現物〞といって「その場にいなければいけない」という考え方が主流でしたが、必ずしもすべてがそうではありませんでした。「なにが生産性として高いのか」を考えながら、在宅勤務やテレワークを含め、働き方を根本から見直しています。概念も制度も、柔軟に大胆に変えていきたいと考えています。 目ざしているのは「新しい視点」がどんどん入ってくる職場ですね。章男社長もよく「周Leaders Talk働く広場 2021.1「ひとりの人として」向き合う姿勢5

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