働く広場2021年1月号
9/36

働く広場 2021.1大手食品メーカーの「サントリーホールディングス株式会社」(以下、「サントリー」)は2010(平成22)年、ダイバーシティ経営に取り組むことを決め、四つの重点領域(国境を超える、性別を超える、ハンディキャップを超える、年齢を超える)を設定した。このうち「ハンディキャップを超える」にかかわる障害者雇用については、グループ各社でおもに身体障害のある社員がいたものの、法定雇用率は未達成の状態だった。そこで2011年に「ダイバーシティ推進室」を人事部に設置。そのなかで障害者雇用の進め方を検討した結果、特例子会社はつくらず直接雇用していくことになったという。サントリー人事部の部長でダイバーシティ推進室長を務める千せん大だい輔すけさんが説明する。「私たちは、多様な一人ひとりの個性が発揮されて強くなっていく組織を目ざすうえで、ハンディキャップのある人もない人も一緒の職場で働くことが、お互いにとって成長の機会にもつながるはずだと考え、特例子会社という形態はとりませんでした」地域の特別支援学校から実習生を受け入れ、2015年には知的障害のある社員4人を採用。サントリーの人事部フロアに席を並べ、サポート役のスタッフ社員(以下、「スタッフ」)1人とともに、各部署へのメール便配布やコピー紙補充などの簡易業務からスタートした。その後、グループ各社の人事・総務・経理領域などのシェアードサービスを手がける「サントリービジネスシステム株式会社」(以下、「サントリービジネス」)が2017年に設立され、障害のある社員(以下、「メンバー」)も同社内の「コラボレイティブセンター」(以下、「コラボセ」)に2018年に移管した。現在は、メンバーとスタッフ合わせて26人が在籍。2020(令和2)年6月1日時点でサントリーの障害者雇用数は107人(身体障害84人、知的障害16人、精神障害7人)、障害者雇用率は2・82%。2019年には「東京都障害者雇用エクセレントカンパニー賞」を受賞した。設立5年で飛躍的に成長したコラボセの、現場の取組みを見せてもらった。お台場のりんかい線東京テレポート駅から歩行者専用橋を渡ったところにあるサントリービル。ここにはいくつものグループ会社が入っている。コラボセがあるフロアでは、午前9時からの朝礼が終わると、メンバーが2チームに分かれてパソコンを囲み、話し合いを始めた。「今日の業務ごとのリーダーと担当者を決めているんですよ」と説明してくれたダイバーシティ経営に沿って「作業から仕事へ」自立自走のチーム失敗を恐れず挑戦し「自立自走できるチーム」を目ざすランチ会やデリバリーなど「社員と接する機会」を増やす「学び続ける機会」をつくり、長期雇用の環境も整備123サントリーホールディングス人事部部長・ダイバーシティ推進室長の千大輔さん(写真提供:サントリービジネスシステム株式会社)POINTサントリービジネスシステムのコラボレイティブセンターが置かれたフロア7

元のページ  ../index.html#9

このブックを見る