働く広場2021年2月号
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働く広場 2021.2工夫していることを教えてください。和田 だれかが抜けても交代のきく体制を構築するためには、新しい仕事にどんどんチャレンジしてもらうことが必要だと思います。弊社の7年目、8年目の社員はよく「新しい仕事にチャレンジしたい」といいます。「障害特性があるからできない」ではなく、「できないからこそ、できるように何をすべきか」を考えることが、相談員の仕事だと心しています。 そして、障害のある社員に「この職場は楽しいよね」、「働き続けられそうだな」と思ってもらうことが、私たちの仕事だと思って日々接しています。塩原 「この人にこの仕事はむずかしい」と思ったとき、私たちがどう対処するかが工夫のしどころです。本人が「苦手だ」といっても、案外上手にできる人もいます。実際にやってみてフィードバックするなど、ていねいなフォローが大切だと思います。高田 弊社では「会社は全員で協力する体制が大事なので、忙しいチームがあれば応援に行ってもらいます」と説明しています。自分の担当より、少しむずかしい仕事の応援をくり返すうち、できるようになる人もいます。携帯端末の分解作業担当からカフェに異動した人は、当初慣れない仕事に苦心していましたが、明るい性格を活かして、お客さまからの人気No.1になりました。内田 仕事を任せるうえでの大前提として、「この障害だからこれはできない」と決めつけるのはいけませんよね。だれにでも可能性が潜んでいますから、それを見つけることも、相談員の仕事でしょう。内田 今後、相談員として活動される方に向けて、必要な知識やスキル、心がけなどを教えていただけますか。和田 相談員の資格認定講習などでベースの知識を得ることが大切です。そのうえで人として真摯に向き合って、取り組むことだと思います。 例えば、100人のうち99人が聴覚障害者で、残る1人が健常者の世界では、手話という共通言語を理解しない健常者は、障害者とみなされるでしょう。何をもって障害者とするかの定義は、存在しないのです。 障害を障害ととらえず、個性と考える。その個性を生かすも殺すも、相談員次第だと思います。り方の人もいますので、それぞれの特性に合わせて対応しています。 しかし、例えば営業社員から「みなさんのおかげで契約が取れました」など、他部署からの感謝の言葉は、全員に伝えるようにしています。高田 ほめ過ぎて失敗した事例があります。以前、「すごいね、うまいね」と障害のある社員を鼓舞することが上手なリーダーがいて、社員の一人がそのテンションに慣れてしまいました。彼は一生懸命、仕事に取り組んでいましたが、そのリーダーが異動になると、次のリーダーは「ほめてくれない」と落ち込んでしまいました。 他方で、叱ったわけではないのに、「怒られた」と誤解して、どんどん落ち込んでしまう人もいます。塩原 たしかに、伝え方しだいで誤解を生むケースもありますね。「私自身は上司ではなく相談員であって、社員のみなさんが働きやすい職場をつくるために存在している」と伝えて、お互いに理解し合えるように心がけています。 また、業務上必要なことでも、現場でネガティブな指摘をしたときには、私にも一報をもらって、必要な場合は相談員がフォローしています。和田 言葉はむずかしいですね。何気ない言葉でものすごく落ち込む人や、けんか腰になることもあります。内田 受け止め方は人それぞれですから、いかに理解してもらうか、工夫が必要です。相談員として対応のコツをお聞きしましたが、ひと言ではいい尽くせませんね。基本的には一人ひとりと向き合いながら、本人に問いかけていくということでしょうか。内田 2021(令和3)年3月から障害者の法定雇用率が0・1%引き上げられます。数の問題はもちろん、雇用の質も問われます。障害のある社員の強みや可能性を引き出すために、障害のある社員の可能性を引き出す相談員として必要なこと進行役の中央障害者雇用情報センター 内田博之さん18

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