働く広場2021年3月号
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働く広場 2021.3ここで社員向けに効果を上げているのが、毎週の「ふり返り」だ。社員一人ひとりにとって必要だと思われる「社会人としての基礎」と「業務遂行能力」について計20項目ほどの質問を表にし、自己評価をA(よくできた)・B1(もっと努力できる)・B2(できなかった)・C(反省をしている)の4段階で示す。隣の欄に上司の評価も同じように記入され、フィードバックのコメントとともに本人に返される。質問は「指導員の話を理解した上で返事をすることができましたか」、「報告・連絡・相談はできましたか(良いことの報告だけでなく、間違いの報告こそ大切にできましたか)」、「紙類は大切にする等、ミスがないように丁寧な仕事ができましたか」といった一般社員も問われるような内容だ。質問項目は、本人たちの成長ぶりに沿って見直している。このふり返りを始めてから、現場はずいぶん変わったという。「例えば、自閉症の傾向があり勤務中も独り言が多かった社員に、ふり返り項目で『仕事のマナーとして、独り言は控えましょう』と伝えたことで、本人も『仕事としての姿勢のありかた』を意識できるようになりました。ふり返りシートの項目は、指導と成長の指標にもなっています」と堀さんは話してくれた。また分室では、堀さんが中心となって、定期的にグループワークによるソーシャルスキルトレーニングも行っている。「上司に話しかけるタイミング」、「仕事を通じたチームワークの形成」といったさまざまなテーマで学んでいる。一瀬さんは「社員一人ひとりが社会人の自覚を持って、いきいきと働けるようになったと感じますね。最終的には、彼らが実社会での自立した生活につなげていきたいと思っています」と手応えを語る。2014年入社で、秋葉原分室に所属している掃か部もん関ぜき智とも樹きさん(29歳)は、地域の就労支援事業所の工場で働いていたところ「一般就労のほうが向いている」とアドバイスされ、板橋区障がい者就労支援センターでパソコンスキルなどを学んだ経緯がある。いまはパソコンを使った入力作業や、同僚が入力したデータの確認を任されているそうだ。勤務中に気をつけていることについて聞いたところ、苦笑いしながらも「感情のコントロールがうまくできないことがあって、それを抑えることを意識しています」と返ってきた。堀さんによると職場で週1回、ふり返りシートを書くことで、自分の感情の起伏を客観的にとらえられるようになっているそうだ。毎回、指導員から「感情のコントロールができています」といったコメントがつくと自信にもつながる。「今後は、実習生や後輩たちにもっと仕事を教えられるようになりたいです」と抱負を語ってくれた。 2019年には「紙すき」事業もスタートした。グループ会社のパッケージ印刷などで発生した損紙を再利用するための事業で、知的障害のある社員6人が従事している。プリプレス本社3階の一角、「紙すき工房」という表札が掲げられたドアを開けると、部屋のなかでは防水エプロン姿の紙すき工房で達成感秋葉原分室で働く掃部関智樹さんパソコンでのデータ入力やデータの確認作業を担当している水槽やバキュームなどが設置された紙すき工房毎週の「ふり返り」に使用されるシート9

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