働く広場2021年3月号
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働く広場 2021.3社員たちがテキパキと手を動かしていた。近くの人に何をしているのか声をかけると「これは乾いた紙をローラーにかけて、厚さが均一になるようにしているんですよ」とていねいに教えてくれた。指導員を務める製造部紙すき工房担当の岡おか田だ和かず志しさんが、作業工程を説明してくれた。まず紙パックの表裏についた薄いフィルムを、カッターなどを使ってきれいにはがし取り、水と一緒に大きめのかくはん機に投入。4時間弱でトロトロになった液体を水槽に流し込み、網枠を使ってすいていく。木版に移しかえた紙を特殊な台に乗せ、バキュームで水分を取り、さらに棚の上で数時間から数日乾かす。大部分の工程が手作業だ。岡田さんによると「天候によって湿度も変わるので、でき上がりの紙の厚さも微妙に違ってきます」とのこと。手紙やハガキ、封筒、名刺用に種類が分かれているため、それぞれ均一の厚さになるよう日々統計を取りながら調整している。立ち上げ1年の工房だが、岡田さんは「私も社員とともに成長していると感じます」という。「当初は工程の担当を固定していましたが、1人に過度な負担がかからないようチームで目的を共有し練習したところ、全員ができるようになり、みんなで大きな達成感も得られました」工房立ち上げと同時に入社した松まつ田だ智とも浩ひろさん(23歳)は、「自分ですいた紙が、きれいな商品になるのを見るとやりがいを感じます。一方で、同じようにすいたつもりでも厚さが違うので、簡単にはいかないなと思います」と話してくれた。紙すき工房で生き返った紙は、凸版印刷が運営する「印刷博物館」(東京都文京区)で、手紙セットなどとして販売している。地元の小学校などから子どもたちを招いて開催される「紙すき体験教室」も好評だ。 プリプレスは2019年10月に「人財開発室」を開設した。室長となった堀さんは、日ごろは本社のほか分室も回り、社員との面談や研修などを通して社員や各拠点のジョブコーチと課題を共有し、育成に向けた環境調整などを重ねている。さらに凸版印刷グループ各社にも出向いて、障害者雇用を進めていくための社員研修やコンサルティング業務も手がける。堀さんは「凸版印刷本社やグループ会社の障害者採用に立ち会ったり、社内で精神疾患のある方と面談し雇用条件を変えたりするなどの支援業務も増えています」と話す。最近も、精神疾患を機に、障害者手帳を取得して職場環境を整えてもらうことを選んだ社員がいるという。一瀬さんは、「社内だけでなく凸版印刷本社とここまで連携ができているのも、専門職の堀さんが常駐して日々やり取りしているおかげです。私もわからないことは何でも聞いて、教えてもらっています」と絶大の信頼を置いている。2020年に入社した田た中なか哲てつ也やさん(31歳)は、堀さんの業務のサポート役と人財開発室を拠点にバキュームを使用し、水分を素早く除去するフィルムをはがす工程を実演する指導員の岡田和志さん紙すき工房で活躍する松田智浩さん網枠を使ってすいていく。仕上がりを左右する大事な工程だ損紙が封筒や便箋などのステーショナリーに生まれ変わる10

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