働く広場2021年3月号
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働く広場 2021.3高橋 悠(たかはし ゆたか) 行政書士事務所にて約8年間、介護・障害福祉サービス事業所の立上げ・運営支援にたずさわった後、2016(平成28)年10月に独立開業。顧問先のうち7割以上が介護・障害福祉サービス事業所である。また、「合同会社サニー・プレイス」を設立し、小規模保育事業所B型および企業主導型保育所を経営している。社会保険労務士・行政書士 高橋 悠 ▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼19※前述の番号が若いほど賃金(工賃)水準は高いですが、その分求められるスキルや能力は上がってきますし、募集枠も狭まってきます。※就労継続支援A型・B型事業はともに障害者が利用者となって事業所に通所し、生産活動を通じて賃金(工賃)を得る機会を提供するというサービスですが、A型は事業者と利用者との間に雇用契約を結ぶのに対し、B型は雇用契約を結ばない(=利用者が通所し、働いた分だけ「工賃」として支払う)という点に違いがあります。 私は社会保険労務士という仕事を通じて、前述の②、③のような「就労継続支援事業所」を経営する方々のお話を常日ごろからお聞きする機会が多いのですが、そのなかでも一番の悩みは、障害福祉サービスを利用する障害者の方に支払う「賃金(工賃)の水準をどう上げるか」というものです。 障害福祉サービスは厚生労働省の設定した基準に基づいたサービスですので、介護保険や医療保険におけるサービスと同様に、サービス提供の対価として国から給付費が支給されます。しかし、この給付費には「障害福祉サービスの利用者への賃金(工賃)」は含まれてはおりませんので、事業所の方々は利用者への賃金(工賃)を支払うため、例えばパンを製造するなど生産活動を自分で生み出し、あるいはほかの   みなさまは「障害者の雇用」というと、どのようなイメージを持たれるでしょうか? ご自身のまわりやご家族に障害者がおられない方の場合、障害者の雇用というと「一般企業の障害者枠で働く障害者」の方をイメージされる方が多いのではと思います。 しかし、実際には一般企業の障害者枠で働いておられる障害者はどちらかというと少数派であり、また、障害の種別的にも身体障害の方が多いのではないかと思います。一般企業への就職が困難な障害者は「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」に規定される障害福祉サービスである、「就労継続支援事業所」において働いています。○障害者が「働く」場所の主な分類①一般企業(障害者枠)②就労継続支援A型事業所(障害福祉サービス)③就労継続支援B型事業所(障害福祉サービス)④前述②、③以外の、日中活動支援サービス(例‥生活介護など)における生産活動(障害福祉サービス)企業などから、例えばボールペンの組立てなどの作業を受託して収入を得るなどして、収入源を確保しています。 当然のことながら、障害者は就労継続支援事業所を選択する場合、賃金(工賃)水準の高い事業所を選択したいと思っていますので、就労継続支援事業所は自らの事業所を選択してもらえるよう、賃金(工賃)を少しでも向上させようと日々努力しています。 しかし、生産活動を自身で行うにしても受託するにしても、「収入の多い生産活動」はほとんどの場合「難易度の高い仕事」であり、さらに受託業務の場合は納期も堅守しなければなりません。 「利用者の賃金(工賃)は上げたい、しかしその日によって利用する障害者のメンバーが変わり、また障害の種別・程度もさまざまな状況で、難易度の高い業務を行うのはむずかしい」と、就労継続支援事業所の経営者は常にこのジレンマに悪戦苦闘しているのが現状となっています。 こうした課題を解決するため、各事業所では賃金(工賃)向上のための多種多様な施策を実施しています。次回からは、こうした事業所の取組みをご紹介しながら、課題解決のための糸口をお話しできればと思います。【第1回】障害者の雇用とは賃金向上のジレンマ障害福祉サービスの現場から

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