働く広場2021年3月号
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座公談開会「働く広場」「働く広場」眞保 法政大学現代福祉学部の眞しん保ぼ智さと子こと申します。近年大学では、学生生活のさまざまな場面で困りごとを抱えて、学生相談室に相談に来る学生が増えています。また、精神障害や発達障害のある学生も増えていて、診断がついている学生がいる一方で、発達障害の可能性が強く示唆される場合でも、さまざまな理由から診断に至っていないケースもあります。こうした学生は、就職における問題に直面することで初めて支援が始まり、非常に苦労することも少なくありません。本日の座談会では、このような学生をどのように支援したらよいのか、働くことにつなげていくために学生たちはどのようなことに向き合って受けとめていく必要があるのかを考えていきたいと思います。まずは丸田先生にお話をうかがいたいと思います。丸田 一橋大学保健センターの丸田です。私からは、発達障害特性を有する学生の支援について、一般雇用の就職活動を同時に進めていく学生がほとんどです。 一般雇用で入社しても、不適応状態になって、2、3年で辞めてしまう学生もいます。就職や一人暮らしを経験し、初めて問題が顕在化する場合もあります。鬱うつや適応障害などの診断がつくこともあります。丸田 一橋大学の学内には、さまざまな支援体制がありますが、この体制ができるまでには、たいへんな苦労がありました。特に苦労をしたのは、教職員の意識改革です。初めのころは、「発達障害のある者を支援をする義務が高等教育にあるのか」という声がたくさんありましたが、10年ほどの時間を経て、いまでは、障害のある人にも働いてもらうことが大事だという認識が広まってきています。 診断を受けた学生は、進学や卒業を目ざすための"修学支援"が受けられます。未診断でも利用できる学生相談もあります。カウン橋大学での取組みをお話しさせていただきたいと思います。 アメリカでは大学入学前に発達障害の診断がついていることが多いのですが、日本では、大学1、2年生の時点で診断がついていることはまれで、就職活動につまずくことで初めて問題が顕在化する傾向があり、支援のスタートが遅れがちです。 学生たちの就職にまつわる課題は多岐に渡ります。医療機関を受診するまでに、1、2年経ってしまうことも多く、障害の受容までに時間がかかる傾向があります。障害者手帳を取得することに抵抗を感じたり、親御さんの理解が得られないこともあります。就職活動の場面でも、先輩に体験談などを聞くこともできないので、一人で悩みがちになり、障害者雇用の待遇の低さや将来の展望の見えにくさに、不安を感じることも多いです。また、障害者雇用の情報をそもそも得にくいといった問題もあります。そのため、発達障害の特性を有していても、一般雇用を目ざしたり、障害者枠に加えて一就職で苦労する、発達障害のある若者たち障害と"向き合い""理解する"働く広場 2021.3この座談会は、2020(令和2)年12月5日(土)、「有楽町朝日スクエア」で開催された『働く広場』公開座談会の採録です。令和2年度内閣府主催 障害者週間連続セミナー~若年求職者への支援を考える~発達障害者の雇用を促進するために20

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