働く広場2021年3月号
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座長眞しん保ぼ 智さと子こさん法政大学 現代福祉学部 教授パネリスト丸まる田た 伯のり子こさん一橋大学 保健センター 教授Sさん(働く当事者)IT企業 障害者枠勤務小お野の寺でら 十みつぐ二さん東京障害者職業センター多摩支所 主任障害者職業カウンセラー出席者セリングを受けるうちに、自己理解を深めていき、自分の特性に気がつくこともありますね。教職員や家族の方から相談されることもあります。留年や休学をした人や、就職後に離職してしまった人の支援も行っています。 保健センターでは、「個人カウンセリング」、「心理検査」、「教職員からの相談」、「専門医の紹介」、「医療との連携」などのさまざまな支援活動を行っています。ここ数年、特に力を入れているのは「グループワーク」という活動で、6人程度の学生を集めて、就労につなげるための社会性を育成するトレーニングを行っています。医療機関でも学生向けのプログラムはありますが、医療機関は対象者が患者にかぎられるのに対し、大学では、未診断の人も対象にしています。 若年者の就労移行支援は、いま、とても関心が高まっている分野です。諸組織が連携し、支援をしていくことが重要だと思います。眞保 ありがとうございました。次に、当事者のSさんにお話をおうかがいしたいと思います。S こんにちは。Sと申します。年齢は32歳で、IT企業の障害者枠で勤務しています。いまは、子どもにも恵まれて幸せな生活を送っていますが、大人の発達障害にかなり苦しんだ時期があります。「物の管理が苦手」、「パニックになってしまうことがある」、「高圧的なコミュニケーションを取られると頭が真っ白になってしまう」、「忘れ物が多い」など、いまでも日常生活の困りごとはとても多いです。 慶応義塾大学を卒業後、Uターン就職で、地元の大手企業に総合職で入社しました。ここまでは順調だったのですが、会社になじめず、社内の保健師に紹介された病院で入れることができるようになりました。「そのような特性はだれもが持っていて、それがたまたま強いだけなんじゃないの?」という妻の言葉に、初めて自分の居場所が見つかったような気がしました。そして、診断から3年経った2016年に障害者手帳を取得しました。 一橋大学入学時の健康診断の問診で、発達障害であると記入したことをきっかけに、丸田先生とつながり、定期的なカウンセリングを受け、グループワークに参加させていただくことになりました。カウンセリングでは、学校生活のみならず、プライベートのことも相談に乗ってもらい、とても助けになりました。グループワークでは、同じように苦しんでいる仲間の悩みを聞くことで、プログラムの内容を受け入れやすかったと思います。同じ立場の仲間の存在は、非常に大事だと感じています。 大学院修了後の就職活動では、前職の一般雇用でうまくいかなかった経験から、障害者枠での就職を目ざしました。ただ、実際に求人を探してみると、正社員の募発達障害の診断を受けました。自分を見つめていくうちに離職を決意し、障害者手帳も取得しました。その後結婚もし、一橋大学大学院の経済学研究科に進学しましたが、子どもがほしいと思い、障害者枠で就職することに決めました。 ふり返ると、診断を受けたときは、自分の将来を真っ暗だと感じました。大企業に就職して安泰だと思っていたのに、それが覆された感じでした。結婚できないかもしれないと、親にも申し訳ない気持ちで一杯でした。また、その職場には、障害への理解を示してくれる人もいましたが、ネガティブな発言をする人の声が気になり、だれの言葉も受け入れることができない状態でした。しかし、当時つき合っていたいまの妻が、私が発達障害であることを告白しても受けとめてくれたことをきっかけに、自分の障害を受け眞保智子さん働く広場 2021.321

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