働く広場2021年3月号
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も、必要とする人に早めに支援を提供することに意味があると思っています。 グループワークでは、まず始めにアイスブレイクなどを行い、その後に、その日のテーマとして、例えば挨拶の仕方や断り方、上司への話しかけ方などについて話し合います。もっともニーズが高いのは、ストレスコーピング(※1)やアンガーマネジメント(※2)です。自分では気づけないストレスの蓄積に気づいて、その対処法や、怒りのコントロール方法などについて学びます。眞保 小野寺さんは、障害のある方本人の自己理解について、どのような支援をされていますか。小野寺 言語表現が豊かな方も苦手な方もいらっしゃいますので、その方が得意とするコミュニケーションスタイルを重視しながら、対話をするように心がけています。例えば、文字や図示した方が受けとめやすい方については、そのような形で情報を整理します。また、知識を得ていくことと同時に、体験してみることもとても大切だと感じています。体験を通じて理解を深めていくことで、自分の苦手な部分についても実感を得やすいと思います。また、「どのような状況で、どんな風にアプローチしたからうまくいった」というように解説をしてくれる支援者の存在がとても重要だと思います。知識としてだけ障害理解をしていくのは、本人にとって非常に負担になりますので、むしろ、どんなところに悩んでいるのか、どうやったらそれを解決できるのかを一緒に考えていく過程で、自分に必要な工夫や支援はこういうものだと気づき、障害の特性についても理解を深めていくのがよいのではないかと思います。S 「ミスをしやすく」、「締め切りを守るのが苦手」だという自分の特性を知っているので、失敗をくり返さないように意識しています。アプリなどのツールを使うことと、ちょっとしたつまずきでも、上司やジョブコーチに相談するようにしています。眞保 キャリアという点では、考えていることはありますか。S いまはアシスタント業務をしていますが、将来の展望は見えていないです。アシスタント業務には、いろいろな仕事を、ミスなく期限内にこなしていく能力が必要ですが、マルチタスクが苦手で不注意が多い私にとっては、自分の苦手分野だという意識があります。正直にいえば、この仕事を続けていて本当に自分に適したキャリアを積めるのか不安を感じています。発達障害は得意不得意の差が大きいため、自分の得意を活かしたい、能力を発揮したいという気持ちが強いです。私の場合は高いIQを活かした仕事がしたいと思いますが、未経験でそのような求人に応募することはむずかしい眞保 現実に生じた課題のなかで考えていくことが有効だということですね。職場では、どんなことが課題となりやすいのでしょうか。小野寺 大きくは、「業務遂行に関するもの」、「人間関係に関するもの」、「ご自身の健康管理も含めた日常生活に関するもの」に分けられます。 日常生活が職業生活に与える影響も大きく、その点については、例えばSさんのように、パートナーの理解は非常に重要です。障害のある方本人が家族にどの程度の援助をしてほしいと思っているかも影響します。生活面の支援を行っている支援団体もたくさんありますので、そういった団体のサポートを利用するのも一つの方法です。眞保 発達障害特性を有する方が働き続けるために何が必要かを議論していきたいと思います。Sさんは、普段どのようなことに気をつけて、仕事をしていらっしゃいますか。発達障害のある方が働き続けるために※1 ストレスコーピング:日常生活においてストレスを感じたときに、そのストレスにうまく対処する技術・能力のこと※2 アンガーマネジメント:怒りの感情と上手につき合うための心理教育、心理トレーニング小野寺十二さん働く広場 2021.323

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