働く広場2021年3月号
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です。いまは資格などを取りながら、できることの可能性を広げていきたいと思っています。 職場の上司にも、自分の力で食べていけるようになりたいと伝えています。まずは目の前にある仕事の経験を積むことで、次のキャリアにつなげていきたいと思っております。眞保 小野寺さんが支援されている企業のなかに、障害のある方のキャリア形成に力を入れている企業はありますか。小野寺 そういった企業事例として、だんだんと仕事の難易度を上げていったり、職位としてグループのリーダーを任せていったり、社内資格のような形でステップアップに取り組んでいたりする企業もあります。業務集約型が多い特例子会社では、「この仕事をずっと続けるのは面白くない」と感じる障害のある方もいらっしゃいます。もう少しキャリアアップにつながるような働き方も含めて考えることはできないのかというご提案をさせていただくこともありますし、実際に、障害のある方の秀でているところを活かせるような職場、仕事の内容、待遇を用意されている企業もあります。将来設計を考えられるような待遇を確保しておかないと、優秀な人材がほかの企業に移ってしまいますので、ぜひ企業には、処遇の面も含めて考えていただきたいなと思います。眞保 事前に集めたアンケートに、「発達障害傾向があるような方が、会社に後輩として入ってきたらうれしいですか」という質問があったのですが、Sさんはいかがでしょうか。S 私は悩みを共有できる人が近くにいてくれたらうれしいです。同じ悩みを持つ後輩ができれば、経験を伝えるなど、ぜひとも力になってあげたいと思います。また、私と同様に総合職で入社しても、実は発達障害者だったという人も多くいらっしゃると思います。そういった人ともつながり、助け合えたらベストだと思います。話が変わりますが、精神的に落ち着いて長く勤めるために最も大切なことは、職場の雰囲気や上司の理解眞保 生きやすくなったという実感があるということですね。眞保 では、これからは会場のみなさんからのご質問を受けつけたいと思います。質問者① 一橋大学ではどのような形で、学生を保健センターにつなげているのか、そのシステムをうかがいたいと思います。丸田 入学時の健康診断で、「発達障害を疑われたことがある」と答える新入生が増えてきました。そういう学生に、「何かあったら、保健センターに来てくださいね」といっておくと、実際に来るのはたいてい数年後になります。本学の保健センターでは医療機関での経験があるカウンセラーを非常勤で雇用しており、むずかしいケースへの対応にとても有用だと思っています。年に数人くらいは教職員や学生相談室やキャリアセンターから紹介があります。グループワークには、年に6人~12人の人数を受け入れていますが、実際にはもっだと思います。実際に私が前職を辞めた大きな要因は、上司との関係がうまくいかなかったことです。眞保 障害のあるなしにかかわらず、3年以内に3割辞めるのが新卒大卒の現状です。職場の風土や理解のある上司の存在がとても大事だと改めて感じました。 Sさんは、仕事をしてみてよかった、自分の障害を受容できてよかったと思うことはありますか。S 障害がわかる前に、「なんでこんなことができないんだろう」と苦しんでいたことについて、「仕方ないな」と割り切ることができるようになりました。また、自分の特性を知ったからこそ、トラブルを起こさないように工夫をして、その後の生活がうまくできているのかなと思います。障害を受け入れることで、人間関係は回りやすくなったと思います。仕事をしてよかったことは、子どもを持てたことです。妻の収入の方が私より多いですが、育休や産休間の収入低下を考えると、私の就労なしでは子どもを持つことはできませんでした。大学でのさまざまな取組み座公談開会「働く広場」「働く広場」働く広場 2021.324

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