働く広場2021年3月号
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働く広場 2021.3 企業規模が小さくなるほど、雇用率の達成割合は低くなりますが、その背景には「障害者は力になりにくい」、「不測の事態があると困る」、「対応のノウハウがない」、「作業の現場の負担になるのではないか」などの不安があることは否めません。一方で、障害者雇用を実際に行っている中小零細企業では、多くの障害者が雇用されており、これは、「中小零細企業においても、障害者を戦力として、積極的に活用できているケースがある」ことを示唆するものだといいます。講演では、「マッチングでの相性の見極め」や「障害に合った仕事の割り振りの工夫」、「コミュニケーションの工夫」、「市場ニーズに合った製品品質の追求」などの配慮や工夫をして、障害者の戦力化を図っている企業の事例が紹介されました。 当機構では毎年、職業リハビリテーションに関する研究成果を周知するとともに、参加者相互の意見交換、経験交流を生み出すための機会として、「職業リハビリテーション研究・実践発表会」を開催しています。第28回となる令和2年度は、新型コロナウイルス感染症を考慮して、特別講演やパネルディスカッションなどの様子を動画で配信し、また、障害者雇用に取り組んでいる企業や支援機関による実践事例などの発表資料を障害者職業総合センター(NIVR)のホームページに掲載する形式で実施しました。ここでは、特別講演「障害者雇用の経営改善効果〜戦力化と相乗効果〜」の様子をダイジェストでお届けします。 登壇したのは、横浜市立大学都市社会文化研究科の教授で、CSR&サステナビリティセンター長の影かげ山やま摩ま子こ弥や氏。「障害者雇用の経営改善効果〜戦力化と相乗効果〜」というテーマを掲げ、障害者雇用が企業の戦力になるだけではなく、健常者の労働生産性を上げることにつながった事例をあげ、そのためには企業を取り巻くネットワークが重要だという主張がなされました。 厚生労働省の発表では、2019(令和元)年6月1日現在の民間企業における障害者の実雇用率は、過去最高ではあるものの、2・11%と法定雇用率の2・2%を下回っており、法定雇用率を達成している企業の割合も全体の半分に満たない状況です。実雇用率も、1976(昭和51)年以降ほぼ一貫して上昇傾向を示していますが、これは企業側が上昇する法定雇用率を追いかけているとも考えられます。影山氏によると、日本企業はCSRを社会貢献ととらえる傾向や、コンプライアンスを重視する傾向があり、大企業を中心に〝義務として〞障害者雇用が進められていることがデータに現れているといいます。※ 今回の特別講演の動画は、NIVRホームページ(https://www.nivr.jeed.go.jp/)にて視聴が可能です。また、講演の内容は、影山氏の著書『なぜ障がい者を雇う中小企業は業績を上げ続けるのか?~経営戦略としての障がい者雇用とCSR~』(中央法規出版)でも詳しく紹介されています中小零細企業における障害者の戦力化特別講演の様子第28回職業リハビリテーション研究・実践発表会特集Part1特別講演「障害者雇用の経営改善効果〜戦力化と相乗効果〜」28

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