働く広場2021年3月号
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働く広場 2021.3 また、障害者が健常者の社員にもよい影響を与えることで、正の相乗効果を生んでいる事例も紹介されました。例えば、「障害者を雇用したことで、人間関係が改善した」、「安全面への配慮などリスクマネジメントが進み、健常者も働きやすい職場になった」、「障害者が付帯業務をになうことで適材適所に基づく分業が進み、健常者の効率や生産性が高まった」などの例は全国に見られます。その結果、健常者の社員の業務パフォーマンスが改善し、業績にまで影響を与えるケースも少なくないといいます。 このような相乗効果が生まれる理由を、影山氏は、障害者に配慮された職場では安心して仕事をするための「心理的安全性」が生まれやすいためだと考察します。健常者のなかに障害者が一人入ると、健常者は、健常者と障害者を意識のうえで区別し、自己を健常者のグループの一員と認識します。この共通性の認識は、共同性の基盤になり、そのうえで、健常者は「障ターや地域障害者職業センター、医療機関、特別支援学校などの障害者を支援する組織との連携です。普段から地域ネットワークを築いておき、迅速で適切な対処をする体制を整えることで、障害者も安心して就労を継続することができるようになると影山氏はいいます。 講演の結びとして、影山氏は、「障害者雇用に関心を持つ企業は多いが、不安があり、ふみ出せないことが多いので、支援機関は、その背中を押すことが大切である」とのメッセージを伝えました。また、障害者雇用を進めようとしている企業には、「どの団体や機関も相談にのってくれるから、思い切って相談に行ってほしい」と述べました。さらに、「普段から相互のコミュニケーションをとることと、企業と福祉では発想が違うので互いの歩み寄りが必要であることを強調し、障害者がやりがいを持って戦力になることが社内に相乗効果を呼び、企業にとってもプラスになるため、前向きに障害者雇用に取り組んでいただきたい。また、障害者を支援する立場の方々も、障害者雇用に取り組む企業を支えるということが重要なポイントになる」と結論づけました。 次号では、「職業リハビリテーション研究・実践発表会」のパネルディスカッションⅠ「障害者を継続雇用するためのノウハウ〜企業在籍型ジョブコーチの活躍〜」、パネルディスカッションⅡ「障害のある社員の活躍のためのICT活用」をダイジェストでお伝えします。害者をサポートしなくてはいけない」という倫理観を持って、障害者に接しようとします。また、障害者を支えるために必然的に相互に協力しあって対応しようとする雰囲気も生まれます。障害者が活き活きと働く姿が見られると、モチベーションはさらに高まります。 このような集団では、健常者同士でも相互に配慮を行う雰囲気が生まれやすくなります。そのため、「障害者雇用が成功している企業は、人間関係が円滑で働きやすく、生産性の高い組織になる可能性がある」と、影山氏は指摘します。例え障害者雇用をしていても、障害者と健常者が別々に働き、接点のない職場では、このような効果は生まれないといいます。 障害者が職場に定着し、力を発揮するためには、職場における〝合理的配慮〞が欠かせません。合理的配慮を効果的に行えるような職場のあり方が、健常者同士にも、円滑な人間関係をつくり出し、業務全体の生産性を高めることにつながっていると影山氏は考えます。実際に、障害者が定着している企業は、社内の雰囲気がよいという声が多いといいます。 障害者への合理的配慮を行うには、知識やノウハウが欠かせません。しかし、企業が自助努力によって経験を蓄積し、知識を身につけるまでには、多大な労力や時間がかかります。そこで重要になるのが、障害者就業・生活支援セン障害者雇用により、経営改善効果が見られた事例「地域ネットワーク」が心強い味方となる特別講演の講師 横浜市立大学都市社会文化研究科 教授CSR&サステナビリティセンター長影山 摩子弥氏29

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