働く広場2021年3月号
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営業部門で、成約したお客さまに贈っていました。これを障害のある人につくってもらおうと社員から発案されたのですが、クリエイティブな部分も多いですから、私は結構なチャレンジかもしれないと思いました。そのうえで私は一つシビアな要求をしました。それまでフラワーアレンジメントは外部調達で、結構な費用もかかっていたため「内製化するなら少しでもコストダウンにつなげてほしい。会社への貢献を明確化することで、本人の働きがいにもつながるはずだ」といったのです。 もちろん実際にスタートしてからは課題もたくさん出てきました。生産が安定しない、人によってできばえが違う、管理や場所確保の問題などです。一方で、伸びしろの可能性も感じていました。そこで、ダイバーシティの担当者に対しその点を本人たちに直接伝えるよう依頼したところ、彼らも会社に期待されていることを知って意欲がわいてきているのがわかりました。 彼らの仕事が会社の生産性アップにつながった場合は、それをしっかりと彼らに伝えてあげなければいけないと思っています。実際に数字もしっかり出しており、右肩上がりのグラフを彼らに示しています。いまは11人が担当するようになりました。 事務系の仕事を担当するチャレンジスタッフ一番わかりやすく納得感のある目標でしょうが、「何よりお客さまから評価されないと、働きがいもない」と私たちは考えました。働きがいがよい仕事につながり、お客さまの評価が高まり、競争力も上がる。循環しながらステージアップし、持続的に成長していく。この考え方が社内全体に浸透するまでは時間もかかりましたが、いまでは社員のアイデンティティになっていると確信しています。 実は2005年にも各部署で「7つの資質」というものを設定したことがあります。多すぎて浸透しなかったと反省していますが、社員のなかに何となく残っていたようで、数年後に現場サイドから「やっぱりCSは大事ですよ」という声が上がってきたのです。種をまいておくことで、そのあとのリーダーたちが形にしていくのだと実感しています。 ちなみに私が入社したころは、東急グループトップの五ご島とう昇のぼるの「失敗を恐れるな、向こう傷は問わない」という言葉を社内でよく聞かされました。私自身、上に立つ者として「とにかくさせてみる」ことを大事にしているつもりです。これは障害者雇用の場でも変わりません。そういう社風のなかで、障害のある人と一緒に働きながら一人ひとりの能力を見つけ、チャレンジしながら仕事をつくり出していく先に、事業全体の競争力強化もあるのの定型業務は70以上に増え、単発的なものは300以上になります。スタッフのなかにはプログラミングが得意な人もいて、外部に委託していたアナログ業務をRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション、コンピュータなどによる業務自動化)に移行させるためのツール構築にたずさわってもらうなどしています。働き方改革が進むなかで、社員の業務効率化などに役立っていくと期待しています。――これまで業務拡大が順調に推進されてきた理由は何だと思いますか。太田 最初のころダイバーシティの担当者が業務の切り出しのため各部署に相談に行ったのですが、どこも予想以上に協力的だったことに驚きました。障害者雇用に対する意識が高い、というべきでしょうか。ベースにあるのは、これまで少しずつつくり上げてきた社風ではないかなと私は感じています。 東急リバブルは2010年からの社内議論を経て、「3つの業界ナンバー1」を目標に掲げています。①お客さまに評価されること=CS(顧客満足)、②社員が働きやすいこと=働きがい、③事業の生産性が上がること=事業競争力、です。本来は事業競争力の強化が働く広場 2021.3ベースにある社風により協力的だった各部署4

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