働く広場2021年4月号
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働く広場 2021.4労働環境になりました。結果として生産性も大きく高まりました」障害者雇用の経験を機に、2006年からはホームレス雇用も始めた。ホームレス支援機関と組み、住居がなくても雇用することとした代わりに、支援機関に登録することを条件にした。福田さんは「足にコケが生えた人をお風呂に入れることからドヤ街の調査まで、想像を超えるケースもたくさんありましたが、さらに社内の課題解決能力も上がりました」と手応えを語る。一方でホームレスから自立する人が増え、行政対応もあって公園のテントは激減したそうだ。美交はいまも支援機関とともに就労への足がかりの場を提供している。 福田さんは現在「一般社団法人大阪ビルメンテナンス協会」の理事も務め、エルチャレとの協働事業を手がけている。美交は協会に入るほどの規模ではなかったが、障害者雇用を始めたのを機に入会したそうだ。というのも大阪府が入札で総合評価方式を導入したとき、業界内では反発も少なくなかった。福田さんは同協会で「障害者雇用をみんなで進めたい」と訴えたという。「他社も障害者雇用に取り組めば入札競争は激しくなります。でも一緒に実践する企業が増えなければ、総合評価方式が効果なしと見なされ、なくなってしまうかもしれません。仲間づくりが美交を守ることにもなると考えました」協会はエルチャレと連携し、地方アビリンピック大阪大会の運営協力もしている。もちろん美交の従業員もアビリンピックに挑戦してきた。また、協会では独自に前述の「障がい者雇用支援スタッフ養成講座」を考案。専任支援者の育成目的で3日間におよぶ講座を年1回実施し、14年で150人以上が受講した。同講座の受講は、大阪府の入札制度の、総合評価の評価基準項目にも入っている。さらに、障害者の余暇支援活動として、地元の天神祭の清掃ボランティア活動を展開するほか、神輿もかつぐようになった。 「大手企業のような社会貢献という枠ではなく、事業の実践を通して無理なく社会に役立っていけるとわかりました」という福田さんは、今後も、会社の成長を目ざしながら、社会に役立つことを実践し続けたいと語る。実際に美交は、障害者雇用やホームレス雇用でつちかった経験を活用し、いまでは公園管理者として市民サービス向上のための取組みも手がける。地域の活性化を目的とした無料レンタサイクル事業や園内バリアフリー踏査、環境啓発イベント、子連れ向けの施設運営など内容も多彩だ。「私たちは公共の仕事が多いので、公共サービスにはこだわりがあります。いかにして市民への社会的サービスや社会的な賑わいを創るのかを追求していきたいのです。ビルメンテナンスというサービス業で障害者が戦力になり、会社の中心となって働けるような職場を、これからもつくり続けていくつもりです」さまざまなケースを積み上げてきた美交は、ほかの企業にも事例やアイデアなどを積極的に紹介している。「障害者雇用は、工夫次第でどの会社でもできると思っています。会社のトップや担当者にも『これならできるかな』と思ってもらえるよう後押ししていきたい」と力強く語る福田さんは、全国各地の企業や団体に呼ばれて講演なども行っている。同業者の協会で仲間を増やす無理なく社会に役立つ2019年の天神祭では、清掃ボランティアや神輿巡行に参加(写真提供:株式会社美交工業)2007年に開催された障がい者雇用支援スタッフ養成講座の様子(写真提供:株式会社美交工業)2015年の地方アビリンピック大阪大会にて、銀賞の賞状を掲げる美交工業の選手(写真提供:株式会社美交工業)9

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