働く広場2021年4月号
13/36

働く広場 2021.4※2 リカバリー:ここでは、「人々が生活や仕事、学ぶことなど、地域社会に参加できるようになる過程」をさす験者として、その事案をどのように考えるのか、上遠野さんの言葉を聴くことで、助けられることがたくさんありました」と語ります。   ピアサポーターとして活動するためには、リカバリー(※2)の経験も大事なポイントです。リカバリーストーリーを発表するような啓発や当事者活動などで社会に働きかける形で活躍しているピアサポーターもいます。 現在、上遠野さんとともに、アイ・キャンのピアミーティング運営の中心となって活動している阿あ野の美み和わさんは、7年前にピアサポーター養成研修を修了。その後、医科大学の授業や企業の従業員対象の勉強会などで、病気とのつきあい方や地域での生活に関する体験談の発表などの活動も行ってきました。阿野さんは、「今後は、もっと開催日時を増やして、より多くの方に参加してもらうのを楽しみにしています」と話してくれました。  全国各地の支援機関などでも、ピアサポーターに注目して養成に取り組む動きが見られます。その一方で、一般企業においてはピアサポーターの強みをどのように活かしたらよいのかわからないという不安などから、ピアサポーターの雇用や活用については、これからという現状もあります。 吉田さんは、これまでの活動をふり返りながらピアサポーターの可能性についてこう語ってくれました。 「私たちの事業所では、ピアサポーターの雇用を通じて、その有効性を実感しています。しかし、今後、さらにピアサポーターの活躍の場を広げるには、一般企業の力を借りていく必要があると考えます。そのためにも、ピアサポーター同士の交流やピアサポーターの普及や啓発活動に努め、企業のみなさんと一緒に、ピアサポーターが活躍しやすい体制づくりに努めていきたいと思います」 職場でも、ピアサポート的な位置づけの先輩社員や同僚の存在が、障害者がより安心して働くことができる環境づくりにつながるかもしれません。障害者の「職場定着」のためのピアサポートの活用に期待が高まっています。次回は、ピアサポート的な活動を職場でも取り入れている事例として、「株式会社ニッセイ・ニュークリエーション」の取組みを紹介します。の養成を行い、同時に、ピアサポーターを活用した支援活動にも積極的に取り組んできました。  現在、アイ・キャンでは、養成研修を修了したピアサポーターを中心に企画・運営されるピアミーティングを、月1回のペースで行っています。ピアミーティングでは、精神障害のある方が持つ悩みや生きづらさをテーマに話し合いを進めます。ピアサポーターは、自身も体験談を語りながら話し合いをリードし、参加者とともに会を創り上げていきます。 「互いの悩みに耳を傾け、向き合っていると、なんとかしてあげたいと思う気持ちがひしひしと伝わってきて、当事者同士の想いの強さを感じます。心のうちを話してくれた人が、ほっとした表情を見せてくれたときには、本当によかったなと思います」と、ピアサポーターとして会の運営にかかわる上か遠とう野の友とも和かずさんは話します。 現在、個人でピアサポートの活動に取り組む上遠野さんは、以前アイ・キャンのスタッフとして約6年半、勤務していました。当時は、ピアミーティングを開催したり、研修会や会議に参加するピアサポーター活動のほか、地域活動支援センターの補助員業務や地域生活を送っている方への訪問や面談などをほかの職員とともに行っていました。また、同じグループの「社会医療法人あさかホスピタル」の入院患者の退院相談を受けるなど、地域移行・地域定着支援業務にも従事。いずれの業務も、自身の経験に基づくピアサポーターならではの視点と専門性を活かしながら活動をしていました。 アイ・キャンの支援員の吉よし田だ真しん也やさんは、上遠野さんの仕事ぶりについて、「患者さんに近い立場で、その方の苦悩や想いをくみ取ることは、私たち一般職員にはむずかしいことです。経リカバリーの経験が、重要な強みにピアサポーターの雇用の現状と課題ピアサポーターの助言に助けられた支援現場ピアミーティングの様子11

元のページ  ../index.html#13

このブックを見る