働く広場2021年4月号
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働く広場 2021.4高橋 悠(たかはし ゆたか) 行政書士事務所にて約8年間、介護・障害福祉サービス事業所の立上げ・運営支援にたずさわった後、2016(平成28)年10月に独立開業。顧問先のうち7割以上が介護・障害福祉サービス事業所である。また、「合同会社サニー・プレイス」を設立し、小規模保育事業所B型および企業主導型保育所を経営している。社会保険労務士・行政書士 高橋 悠 ▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼19な作業の受注や納期の厳しい作業を受注するためには、利用者に高い技術やチームプレーの能力が必要であり、多くの事業所はいまもこのジレンマに苦しんでいます。 しかし近年、インターネットの普及にともなって、事業所で利用者にパソコンなどを支給したうえで、従来の生産活動とは一線を画したことを実施する事業所も増えてきました。 例としては次の通りです。① インターネットオークションへの 出品② 企業ホームページに掲載するブログ記事の作成代行③ 中古パソコンの引取り、およびデータ消去作業の請負④ 自作の生産物(パソコンゲーム、CD、LINEスタンプなど)の販売 身体障害者、精神障害者のなかには、肢体不自由や長時間(または毎日)働けないという理由で一般企業に勤務することが困難なため、やむなく就労継続支援事業所で働いているというケースも多くあります。その一方で「知識 前回は、障害者の就労の場を提供している「就労継続支援事業所」についてお話ししました。各事業所においては、自らの事業所を選択してもらえるよう、賃金(工賃)向上のための多種多様な施策を実施しています。 今回からは、こうした事業所の取組みをいくつかご紹介していきます。 就労継続支援事業所の提供する「就労継続支援サービス」は、2006(平成18)年4月の障害者自立支援法(現‥障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律)の施行によって誕生しましたが、その前からも「作業所」または「授産施設」という名で障害者に就労・生産活動の機会を提供している事業所は存在していました。 しかし、その作業内容はおもに、ほかの企業から受注しての軽作業(例‥割り箸の袋詰め、ボールペン組立てなど)がほとんどでした。受注額が低いため工賃収入を高くすることがむずかしく、また作業も単調であることから、利用者のモチベーションの維持にも苦労していました。かといって、大規模労働における能力」は健常者とほぼ変わらない、またはそれ以上(例えば、エンジニアなどのIT職に就いていて、後天的に身体障害や精神障害となった方など)の方も多いため、こうした利用者が多く通所する事業所においては、上記のようなインターネットを介したビジネスに積極的に乗り出し、生産活動の機会とすることが可能となります。 インターネットに慣れ親しんだ世代であれば特別な技術の習得も必要なく、システムの導入や手順さえ覚えてしまえば一人でも作業を完結することができるというのも、大きなメリットです。 就労継続支援事業においては「福祉」という意識が強く、また積極的にITを導入している事業所も少ないため、どうしてもこうしたインターネットビジネスの展開にふみ切るのは抵抗があります。 しかし、従来からの状況をなんとか打破しようと、既存の作業内容から離れ、まったく新しい領域にふみ出していくことで、工賃向上を実現させている事業所も、近年では増加傾向にあります。【第2回】インターネットの活用による生産活動の機会の創出障害福祉サービスの現場から

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