働く広場2021年4月号
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り、コースごとに専門の教員をつける本物へのこだわりが見える。例えば、木工コースでは、担当の教員は工業高校で教えていた教員であったり、フードサービスコースでは、担当の教員が数カ月間、レストランやパン工房で接客やパン・焼き菓子づくりの修行を受け、本格的なノウハウを学んだりしたという。 取材の日は、各コースでの専門教科の授業の様子を見学した。 まず、最初に案内してもらったのが染織デザインコースだ。藍染め・草木染めなどを行っている教室に入ると、生徒設置された県内で2校目の高等特別支援学校で、開校から今年で10年目となる。教育目標には「本物の働く力を育み、笑顔輝く生徒の育成」を掲げている。 1学年の定員は96人、知的障がいのある方が選考を受けて入学する学校であり、ここ数年卒業後の進路は、約8割が企業就労、そのほかは就労移行支援などの福祉サービスとなっている。 市川大野高等学園での特徴的な活動を二つ紹介したい。一つめは「本物志向の専門教科」、二つめは「地域密着のデュアルシステム」だ。 入学時に4学科(9コース)のなかから一つを選択し3年間専門教科として学ぶ(図4)。代表的な日課表(図5)にあるように、学習カリキュラムの半分弱がこの専門教科である。 この専門教科で目ざしていることは、例えば農業コースの生徒が将来的に農業の仕事に就くことではなく、どのコースにおいても「働くことを学ぶ」ためのカリキュラムと位置づけており、「元気なあいさつができること」、「時間内集中して取り組むこと」、「わからないことはきちんと質問すること」、「失敗したら速やかに報告すること」、「途中で投げ出さず、最後までやり抜くこと」といった、働くうえでの基本的な力をつちかうことにある。 この専門教科は、教育目標にある通様子を見るだけでなく、保護者と社員が意見交換する場を設けるなど進化させた。企業側はこの取組みをどのように受けとめているのか、そして保護者は、どのような思いで子どもたちと向き合い日々を過ごしているのかなど、活発なやりとりがあったそうだ。 パートナーシップ実習について、受け入れ企業からは、「社内の理解啓発につながるよい機会だ」などの声があるという。企業側にとっても非常に有意義な活動であり、まさに企業と学校が互いにWinーWinとなる活動であると感じた。 港特別支援学校の目標は生徒全員の企業就労であるが、そのうえで「全員が働き続けること」、「就労が定着すること」が重要だと考えている。そのためには「もっと社会・企業の障がいへの理解が促進されることが重要であり、これからも企業と連携しながら、よりよい社会づくりに向けたさまざまな情報発信を続けたい」と、安田先生は語ってくれた。 市川大野高等学園では、就労支援コーディネーターの石いし倉くら正まさ裕ひろ先生と進路指導部長の田た中なか明あき子こ先生にお話をうかがった。 市川大野高等学園は、知的障がい者の社会的・職業的自立を目ざす専門学科が市川大野高等学園のこだわり今後の展望本物志向の専門教科働く広場 2021.4千葉県立特別支援学校 市川大野高等学園市川大野高等学園 就労支援コーディネーターの石倉正裕先生進路指導部長の田中明子先生(市川大野高等学園の資料より作成)(出典:市川大野高等学園ホームページ)図4 専門学科とコース 図5 代表的な日課表学科コース園芸技術科農 業園 芸工業技術科木 工窯 業生活デザイン科ソーイングデザイン染織デザイン流通サービス科フードサービスメンテナンスサービス流 通月火水木金8:35登 校8:35S H R8:45清 掃19:05専門教科専門教科職業音楽専門教科210:00理科英語310:55国語情報411:50家庭数学12:35昼休み513:25総合/HR専門教科保健体育社会道徳614:20自立活動美術保健体育特別活動15:10S H R15:35部活動部活動部活動23

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