働く広場2021年4月号
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く経験をしてみることだと考えます。コロナ禍で、さまざまな活動が制限されていることも事実ですが、できることを一歩でも前に進めてみませんか?「一緒に働きたい」と思える生徒さんに出会えるかもしれません。 私が授かった第一子はダウン症というハンディキャップを持って生まれてきた。出産翌日に医師から告知を受け、私は深い悲しみに突き落とされた。それでも目の前のわが子を育てなくてはという使命感で、家族とともにわが子とかかわるなかで、生後3カ月目に初めてわが子が見せた笑顔は、いまでも忘れられない。この笑顔によって私は救われ、この子の笑顔はきっと周囲を元気にできる。この子が胸を張って生きていける社会に変えなければという思いに急き立てられた。 障がい児の親となってから見た社会は、決して生きやすくはなかった。でもいま、13歳になった息子は、たくさんの方に支えられ、日々悩みながらもたくましく生きている。「大学生になりたい!その後は会社でかっこよく働きたい!」と意欲十分だ。その夢は叶えられるだろうか。 障がいのある子を授かったことに悲しまない「だれもが生きやすく、活躍できる社会づくり」に向けた歩みを、これからも一歩一歩進めていきたい。ながる非常に重要なことだと考える。 学校設立から数年は卒業後全員の企業就労を目ざして活動をしてきたが、就職させることがゴールではなく、定着率(働き続けること)を大事に考えて、本人の意志を一番に保護者とも三者面談を重ねながら納得のできる進路決定を進めているという。 今回取材させていただいた2校にかぎらず、特別支援学校では、卒業後の「働くために必要な力を育む」ためのさまざまな取組みを行っていますので、社会で活躍できる知的障がいのある方はたくさんいます。その方たちがさらに力をつけるためには、学校での学習だけでなく、企業での実習など、より多くの経験を重ねることが重要です。しかし、コロナ禍で受入れがむずかしいという企業も出てきており、生徒の経験の場が縮小している現状があります。 『みなさんの働く仲間に、知的障がいのある方はいますか? もしいなければ、まずは一緒に働く機会をつくってみませんか?』 障がい者雇用を進めるうえで、実際に障がいのある方について知る機会、接する機会をつくることは重要なステップとなります。まず、企業ができることの一つは、生徒の実習を受け入れ、一緒に働ではないか」といった提案もあるそうだ。 デュアル実習にあたって、生徒は事前に目標を設定する。デュアル実習を終えると必ずふり返り表を基に自身の活動を評価し、同行した教員とともにふり返りをていねいに行う。 このデュアル実習は、実習先でのスキルの向上よりも、働く意欲や働くうえで必要な力を学ぶ機会ととらえている。 千葉県内46校の特別支援学校のうち29校には、32人の「就労支援コーディネーター」と呼ばれる教員が配置されている。企業との橋渡し役として、日々生徒の実習先や実際の就職先となる企業の開拓に奔走している。市川大野高等学園には2人の就労支援コーディネーターと、学年ごとの進路担当教員を含め6人の体制で生徒の進路関連業務を行っている。石倉先生は、「実はこれでも十分な人数とはいえない」という。その分クラス担任一人ひとりの力が大事だそうだ。1クラス8人の生徒を受け持つ担任も、校内の授業だけでなくデュアル実習や職場実習(インターン)への同行を通して、企業の実態を知る機会が多い。個々の生徒を熟知している担任が企業についても知ることで、より個々の生徒に合う職場とのマッチングが可能になる。このことは就労後の定着につだれもが生きやすく活躍できる社会を目ざして企業のみなさまへ生徒の就労に向けて鍵を握る担任力働く広場 2021.4大型の電動工具を駆使し、椅子やふみ台などをつくる校舎内外の清掃作業を通して、手法や道具の使い方を学ぶ電動ろくろを使い粘土から器を生み出す25

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