働く広場2021年4月号
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働く広場 2021.4社内にいるからこそ状況がよくわかり、当事者のみならず、職場の管理者や担当者などが安心して働ける環境や体制づくりに貢献できる」、「企業在籍型ジョブコーチの役割は多岐にわたり、社内ですべて対応していくのは困難なため、外部の支援機関との連携が欠かせない」などの、実体験に基づいた考えが示されました。 細川氏からは、「ジョブコーチ研修で得た情報などを報告・共有し、障害者雇用の方向性を少しずつ社内に周知することで、社員の理解を得て、支援体制の整備につながっていった」という経験が語られ、ジョブコーチに加えて、現場での支援や課題の報告を行う「障害者職業生活相談員」を配置するなどの現行の支援体制についての紹介がなされました。 松本氏は、精神科の臨床心理士としても勤務している立場から、「職場環境を把握しやすい企業在籍型ジョブコーチが産業医と連携することで、いち早い医学的判断と、雇用継続のための早期での危機介入ができる」とその有用性を強調しました。 後半のディスカッションでは、「企業在籍型ジョブコーチには、当事者の声、周囲の声の両方に耳を傾け、調整・実行していく力が必要」、「時間も労力もかかる社内の体制づくりに孤軍奮闘している企業在籍型ジョブコーチが多いため、外部で連携できる場所があるとよい」などの声があがり、企業在籍型ジョブコーチに求められる能力や外部機関との連携の重要性についても言及されました。 職業リハビリテーションに関する研究や実践の成果を周知するための機会として、毎年開催されている「職業リハビリテーション研究・実践発表会」。2020︵令和2︶年度は、新型コロナウイルス感染症を考慮して、特別講演やパネルディスカッションなどの様子の動画配信と、実践事例などの発表資料を、障害者職業総合センター︵NIVR︶のホームページに掲載する形式で実施しました。ここでは、パネルディスカッションⅠ・Ⅱの様子をダイジェストでお伝えします。 近年、企業在籍型ジョブコーチ養成研修の受講者が増加していますが、これは、企業が障害者雇用に対応する体制の整備を進めているということの現れであり、企業在籍型ジョブコーチが企業の障害者雇用に大きく貢献しているということが示されているとも考えられます。 パネルディスカッションⅠでは、東京障害者職業センター所長の鈴すず木き瑞みず哉や氏と、障害者職業総合センター主任研究員の野の澤ざわ紀のり子こ氏をコーディネーターとして、実際に企業在籍型ジョブコーチとして活躍中の、あおぞら銀行人事部人事グループ調査役・精神保健福祉士の星ほし希のぞみ望氏、青山商事株式会社ロジスティクス戦略部長の細ほそ川かわ孝たか志し氏、豊とよ通つうオフィスサービス株式会社臨床心理士・社会福祉士の松まつ本もと優ゆう子こ氏の3人をパネリストに迎えて、企業在籍型ジョブコーチの役割や可能性について検討しました。 はじめに、野澤氏から、所属する研究部門での調査結果の報告があり、「企業における企業在籍型ジョブコーチの配置の意向は高いものの、ジョブコーチを支援する社内体制ができていない」などの課題が指摘されました。 次に、各パネリストから、それぞれの企業内の取組み事例が紹介されました。 星氏からは、「企業在籍型ジョブコーチは、※コーディネーターとパネリストの方々の所属先・役職および企業の従業員数とその内訳は収録時のものです障害者を継続雇用するためのノウハウ~企業在籍型ジョブコーチの活躍~ パネルディスカッションⅠ第28回職業リハビリテーション研究・実践発表会特集Part2パネルディスカッションⅠ「障害者を継続雇用するためのノウハウ 〜企業在籍型ジョブコーチの活躍〜」Ⅱ「障害のある社員の活躍のためのICT活用」28

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