働く広場2021年4月号
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働く広場 2021.4ビルメンテナンス・造園業の「株式会社美交工業」(以下、「美交」)は、1980(昭和55)年に設立され、おもに大阪府や大阪市からの受託事業として、施設の清掃、公園の管理運営(指定管理)などを行ってきた。障害者雇用については、2003(平成15)年に知的障害者1人の雇用からスタートし、いまでは従業員170人のうち障害者が22人(身体障害2人、知的障害20人)、障害者雇用率は20・76%(2020年6月1日現在)にのぼる。2005年に大阪府ハートフル企業大賞を受賞、その後も障害者雇用職場改善好事例優秀賞、ダイバーシティ経営企業100選などに選ばれ、2020(令和2)年度から始まった「障害者雇用に関する優良な中小事業主の認定制度(もにす認定制度)」では、大阪府初の事業主として認定された。小規模ながらも障害者雇用にふみ出したきっかけは何だろうか。専務取締役として旗ふり役をになってきた福ふく田だ久く美み子こさんは、「『エル・チャレンジ』(以下、「エルチャレ」)で運営する就労支援事業との連携と、大阪府の入札制度が総合評価方式に変わったことが大きい」とふり返る。エルチャレの正式名称は「大阪知的障害者雇用促進建物サービス事業協同組合」(大阪府大阪市)。清掃や建物サービスに特化した障害者雇用を進めるため、1999年に「社会福祉法人大阪知的障害者育成会(現社会福祉法人大阪手をつなぐ育成会)」や就労支援機関などが集まり設立、現在は6団体で構成されている。エルチャレは、大阪府などの自治体と連携し、公共施設の清掃業務を活用することで、職業的重度の知的障害者などの就労訓練に取り組んできた。一方で大阪府は、清掃業務の入札制度についても検討し、障害者雇用などを評価項目に盛り込んだ「総合評価一般競争入札制度」を2003年度に導入した。美交も、同じころにエルチャレから障害者雇用の提案を受けた。福田さんは「エルチャレの利用者は、実際の現場で1~2年間の訓練を経験しているという安心感があった」という。美交はエルチャレとともに、本人の障害特性に応じて作業を組み合わせながら、雇用方法を検討。初めて採用した従業員は、公園の巡回清掃業務に加わった。4人で1チームとなり、軽自動車で移動しながら公園を清掃して回る内容だ。「最初は熊手で落ち葉を掃くときに、一生懸命すぎて土まで掘っていましたね。支援に入ったエルチャレのジョブコーチが体で覚えるようにうながし、本人も加減がわかるようになって、だんだんやわらかい表情になっていったのを覚えています」その後もエルチャレから採用を続けてきたが、安定して雇用できた大きな要因として、福田さんは職場の支援体制づくりを挙げる。業務の特性上、あちこちに点在する清掃現場では、本社との温度差もできてしまいがちであるため専任支援者を置いたが、「現場任せにすると、支援者や責任者の負担が大きくなりかねないと思いました」と福田さん。そこで本社にも企業在籍型ジョブコーチの資格を従業員170人で障害者雇用率20%超現場と本社の支援体制就労支援機関との連携を機に1人から採用、総合評価方式の入札制度が雇用を後押し専任支援者、本社のジョブコーチ、支援機関によるケース会議で課題解決同業者の協会と支援機関の連携も進め、業界全体で障害者雇用を拡大123POINT美交工業で障害者を支援する(左から)古殿世津子さん、谷本さゆりさん、佐藤弘美さん、福田久美子さん、辻秀和さん5

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